Page: 2/42  << >>
サリンジャー入門

 
 

『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を30年ぶりに読み、ついでに古本屋でみつけた『ナイン・ストーリーズ』を読んでみたらサリンジャーのよさがわかった。

『ナイン・ストーリーズ』の9話のうち「エズミに捧ぐ――愛と汚辱のうちに」は、多くの作家が書きたがっている憧れの小説と思われる。普通、かわいい子供が小説に登場すると読むに耐えない。作家がかわいいと思っても読者はそう思わない。これは他人の子供の写真を見せられるのと一緒で、子供なんてみんなかわいいのだから誰が特別というわけにはいかない。

ところが、サリンジャーが書くとかわいい。かわいくて面白くてかっこいい。

『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の主人公の妹フィービーが人気だが「エズミに捧ぐ」のチャールズが1番いい。

喫茶店で一人でくつろぐ男のところにチャールズがやってきて、男の二の腕をぶん殴り、

「壁が、隣の壁になんて言ったか?」

と聞いてくる。

男が降参すると、
「角で会いましょう! じゃないか!」

男が(傑作だ!)と感動しているとチャールズはケラケラと笑いが止まらない。

「壁が、隣の壁になんて言ったか?」

ともう一度聞いてくる。

男は戸惑い、「角で会いましょう、かな?」

チャールズは機嫌を損ね、怒ってその場を立ち去る。

ぎくしゃくしたままの関係でチャールズと別れるわけにはいかない。チャールズの背中をつまんで男が尋ねる。

「壁が、隣の壁になんて言ったか?」

チャールズは目を輝かせて「角で会いましょう!」

ラストもよかった。

『エズミに捧ぐ』が世界に通用する小説ならば、木山捷平の『苦いお茶』も、絶対に世界に通用する。

『ナイン・ストーリーズ』はサリンジャーが過去に発表した作品の中から選んだ9短篇で、他も読みたくなったので調べてみると著作が全部で7冊しかない。

1つの小説が他の小説とリンクしているものが多く、全作品読みたくなるようになっている。面白くて止まらなくなる。(山田)

 

●『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の主人公・ホールデン・コールフィールドが主人公の作品

『気ちがいのぼく』1945

『マディソン郡のはずれの小さな反抗』1946

『キャッチャー・イン・ザ・ライ』1951

●ホールデンの兄、ヴィンセント・コールフィールドが主人公

『マヨネーズぬきのサンドイッチ』1945

●ヴィンセントの親友ベーブ・グラドウォーラーが主人公

『最後の休暇の最後の日』1944

『フランスのアメリカ兵』1945

『他人行儀』1945年、

●グラース・サーガと呼ばれる7人兄弟が登場する作品

『バナナフィッシュにうってつけの日』1948

『コネティカットのひょこひょこおじさん』1948

『小舟のほとりで』1949

『フラニー』1955

『大工よ、屋根の梁を高く上げよ』1955

『ゾーイー』1957

『シーモア―序章―』1959

『ハプスワース16,一九二四』1965

●グラース一家

○レス    父 元芸人

○ベシー   母 元芸人

○シーモア  長男 1917年生まれ。1948年、31歳でピストル自殺

○バディ   二男 1919年生まれ。作家

○ブーブー  長女 1922年生まれ。3児の母

○ウォルト  三男 1923年生まれ。双子。日本でストーブの爆発事故死

○ウェーカー 四男 1923年生まれ。双子。司祭

○ゾーイー  五男 1930年生まれ。俳優

○フラニー  二女 1935年生まれ。新進女優

52女は一番上から1番下まで18歳の差があり、それぞれ子供時代に天才と呼ばれた。

●日本語訳全736作品

○『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(白水社)

○『フラニーとゾーイー』(新潮文庫)

「フラニー」「ゾーイー」収録

○『大工よ、屋根の梁を高く上げよ シーモア―序章―』(新潮文庫)

「大工よ、屋根の梁を高く上げよ」「シーモア―序章―」収録

○『ナイン・ストーリーズ』(新潮文庫)

「バナナフィッシュにうってつけの日」「コネティカットのひょこひょこおじさん」「対エスキモー戦争の前夜」「笑い男」「小舟のほとりで」「エズミに捧ぐ――愛と汚辱のうちに」「愛らしき口もとは緑」「ド・ドーミエ=スミスの青の時代」「テディ」収録

○『サリンジャー選集2』(荒地出版社)

「若者たち」「エディーに会いな」「じき要領をおぼえます」「できそこないのラヴ・ロマンス」「ルイス・タゲットのデビュー」「ある歩兵に関する個人的なおぼえがき」「ヴォリオーニ兄弟」「二人で愛し合うならば」「やさしい軍曹」「最後の休暇の最後の日」「週一回なら参らない」「フランスのアメリカ兵」「イレーヌ」「マヨネーズぬきのサンドイッチ」「他人行儀」「気ちがいのぼく」計16作品収録

○『サリンジャー選集3』(荒地出版社)

「マディソン郡のはずれの小さな反抗」「大戦直前のウェストの細い女」「ある少女の思い出」「ブルー・メロディー」「倒錯の森」計5作品収録

○『サリンジャー選集別巻1 ハプスワース16,一九二四』(荒地出版社)

●発表年順(日本語訳36作)

『若者たち』1940

『エディーに会いな』1940

『じき要領をおぼえます』1941

『できそこないのラヴ・ロマンス』1941

『ルイス・タゲットのデビュー』1942

『ある歩兵に関する個人的なおぼえがき』1942

『ヴォリオーニ兄弟』1943

『二人で愛し合うならば』1943

『やさしい軍曹』1944

『最後の休暇の最後の日』1944

『週一回なら参らない』1944

『フランスのアメリカ兵』1945

『イレーヌ』1945

『マヨネーズぬきのサンドイッチ』1945

『気ちがいのぼく』1945

『他人行儀』1945

『マディソン郡のはずれの小さな反抗』1946

『大戦直前のウェストの細い女』1947

『倒錯の森』1947

『バナナフィッシュにうってつけの日』1948

『コネティカットのひょこひょこおじさん』1948

『対エスキモー戦争の前夜』1948

『ある少女の思い出』1948

『ブルー・メロディー』1948

『笑い男』1949

『小舟のほとりで』1949

『エズミに捧ぐ――愛と汚辱のうちに』1950

『キャッチャー・イン・ザ・ライ』1951

『愛らしき口もとは緑』1951

『ド・ドーミエ=スミスの青の時代』1952

『テディ』1953

『フラニー』1955

『大工よ、屋根の梁を高く上げよ』1955

『ゾーイー』1957

『シーモア―序章―』1959

『ハプスワース16,一九二四』1965

 

| chat-miaou | 02:01 |
『「連続殺人犯」の心理分析』



普通でない人の話は興味深く、言葉も世界も新鮮で一気に読み終えた。

ジェイソン・モスは連続殺人犯が喜びそうな手紙を彼らに書き、文通する。

33人殺しのジョン・ウェイン・ゲーシー、14人殺しのリチャード・ラミレス、15人殺しのシェフリー・ダーマー、殺人集団の指導者チャールズ・マンソンと文通する。

殺人者は普通の人ではない。発言も発想も普通とかなり違う。

ジョン・ウェイン・ゲーシーとはかなり仲良くなり、収容所から家に電話がかかってくるまでになる。

ゲーシーはジェイソンに手紙と電話で弟との近親相姦を強くすすめる。近親相姦をすすめながら興奮しているのがわかる。マスターベーションをしているのがわかる。

「男相手でもセックスができるんだ。弟のベットに潜り込んでレスリングをはじめて抱え込めばいい。弟は君のものだ。あの年頃の少年は誰でもすぐに勃起する」

たくさんの少年たちを犯し殺害して自宅の地下に埋めたゲーシーは妹とのセックスを語りジェイソンへの熱い説得を続ける。

レイプ殺人魔ラミレスに女性の写真を送ってやると返事がきた。「今度は尻が丸見えで、足の裏が見えているのを送ってくれ」

ラミレスに恋人を殴ったと書いたら興奮してすぐに返事がきた。「顎を打ち砕いたか? 針で手や足を突き刺したか? わめき声を録音したか?」

ジェイソンはついにジョン・ウェイン・ゲーシーに会いに行く。

ゲーシーはジェイソンをみながらマスターベーションをした。暴言を吐きながら興奮を高めて真っ赤になってマスターベーションをし、終わると楽しそうに子供みたいに笑った。ゲーシーの描くピエロの絵は高く売れるので金には困らない。看守に金をやり、ある程度自由に暮らすことができる。ジェイソンと二人きりになることもできる。1日目はビキニパンツをプレゼントされ、「明日は俺のためにこれをはいてきてくれる?」と頼まれ、2日目も暴言をはきながらマスターベーションをした。

好奇心と研究よりも、ジェイソンの心は次第に病んでいった。

殺人者たちの発言は具体的で極端で、殺人者特有の共通点のようなものがある。性衝動、攻撃欲、食欲の中枢は脳に近接し、波及効果があるという。人が苦しむのをみて興奮するサディストにはこの波及効果が強い。食欲は弱い動物への略奪行為と結びつき、性欲は他の雄への攻撃に結びつく。その抑制のためにも、教育、法、宗教が必要になるが、教育、法、宗教では管理できない普通でない人たちがいる。(山田)

| chat-miaou | 01:01 |
スティーブ・ジョブズ



「ジーンズについている小さなポケットは何のためにあるのかやっとわかった」

記者会見でそういってスティーブ・ジョブズは新製品アイポッドNANOをジーンズの小さなポケットから取り出してみせた。

観客がどよめく。盛り上がる。ため息をつく。自社新製品の発表会なのに面白いショウになっている。

スタンフォード大学の卒業生に向けたスピーチもすごい。このスピーチに感化され、また新しい若き才能が生まれる。ある意味、読書なんて、この短いスピーチ1つで十分な気がする。歴史に残る名画1本と同じ価値がある。言葉が生きている。無駄な言葉がない。心をゆさぶられる。本気で伝えるために一言一言に意味が集中している。何度も何度も繰り返し読んでしまう。100年後の若者がこのスピーチを読んだり聴いて感動し、行動をおこす。エジソンより偉い。発言も行動も映像も、ほぼ全ての記録が詳しく残っているからエジソンよりも信憑性が高い。自分のつくった会社を追い出され、新しくつくった会社でまた成功し、自分の追い出された会社が傾くと復帰してたてなおした。経営者としてもこんな人間は他にいない。未来ではエジソンよりも伝記が読まれ、尊敬される。

●「ふりかえってみると、好奇心と直感に素直に従って出会った物が、後になって貴重な物だった」

●「本当に満足できる唯一の方法はグレートだと信じることのできる仕事をすること。グレートな仕事をする唯一の方法は自分のしていることを愛すること」

●「ガンになってわかった。常に死を意識していることは、人生の選択をする時に最も役に立つ。外部からの期待、プライド、将来に対する不安、こういったものが死に直面するとすっ飛び、本当に重要な気持ちだけが残る。『遠くない将来、人生が終わる』、そう意識することが人生の重要な選択を手助けしてくれるすぐれたツールとなる」

●「死は古いものを排除し、新しいものに道を開く。悲しいことに、新しいあなたたちもそう遠くないうちに確実に古くなり、排除される。他人の意見は雑音なので自分の心の声がかき消されないようにしてほしい。自分には失うものがあるというのは思考の落とし穴だ。時間は限られている。あなたたちは今、何も身に着けていないのだから当然自分の心に従うべきだ」

●「定説にとらわれ『そろそろ落ち着こう』と考えるのは他人の思考の結果である。そんなことをしては他人の人生を生きることになってしまう。恋愛がそうであるように、大事なものをみつければ自分でもわかる。年を重ねるごとによくなっていく。だから探し続ける、落ち着く必要はない。最も重要なのは自分の直感に従う勇気を持つこと、直感と自分の心の声はあなたが本当は何になりたいのか、なぜだかもうすでに知っている。他のことは雑音だ」

 

世界を変えた男が世界に通用する秀才たちをこんな簡単な言葉でふるいたたせている。最初から最後まで簡単なわかりやすい英語で、聴き取りにくいところも一つもない。まるで全世界の、未来の若者へのメッセージであることを計算にいれているようだ。日本人の中学生にだってわかる簡単な単語が並ぶ。中学校の教科書に全文載せればまた世界が変わる。本当に大事なことは、簡単な言葉で伝わる。

誰もがぼんやりとはわかっているこんな簡単なことをジョブズははっきりとストレートな言葉にできる。誰もがうっすらと考えていることなのに普通の人はこんなスピーチをできない。ジョブズのような人が確信をもって言葉にすると圧倒される。こんなスピーチをできる校長先生は1人もいない。

ジョブズがいうから説得力があるのか。そうでもあるが、そうでもない。無名の人が同じことをいえたとしたら、ある程度は共感を得るが、なぜだかやはりこんな表現は普通の人間にはできない。なぜだか、声が違う、話し方が違う、空気が違う、発音が違う、イントネーションが違う、本気度が違う、説得力が違う、何もかも違う。ビル・ゲイツや他のカリスマ経営者たちのスピーチと聴き比べてみるとよくわかる。スティーブ・ジョブズだけ、全然レベルが違う。ぐんぐん伝わってくる。心の中心までせまってくる。

アップル社の名前の由来はジョブズが好きなビートルズが所属したレコード会社の名前からきているという説が強い。1970年代に、反体制ロックの影響を強く受けたジョブズの表現力はロックスター並みになっている。(山田)

 

| chat-miaou | 02:01 |
『猫料理』



編集部にいた頃、本の企画会議で『自慢のペット料理レシピ集』という企画を出し、自分のペットがいらなくなったら料理して食べよう、という企画趣旨を真面目に説明していたら、編集長に「ふざけんな! いい加減にしろ、そんな本、出せるわけねーだろ!」と怒られた。その頃の私は、取材で朝から自殺現場を見学に走り回っていたので社内の一部で「変な本ばかりつくる人」と噂が立った。

変な本をつくりたかったのではなく、動物好きの獣医がテレビで涙目になりながら、「ペットを捨てるくらいなら、責任をもって自分で食べてください、ペットにはなんの罪もない」と訴えていたのに心を動かされて、そんな気持ちを本にしてみたかった。実現したら話題になった自信はある。自殺現場をみて回ったのも、死者の無言の訴えのような空気を感じて本にしたかった。無言どころか自殺者の残す無言の空気は夜中について回り、うるさくて不眠症になり、軽いノイローゼになった。

作家の北條民雄(1914-1937)は猫の料理法を書いている。

北條民雄はハンセン病の施設に入院し、施設で執筆活動を続けながら施設で死んだ。芥川賞候補にもなった。ドストエフスキーの大ファンだった北條は『死の家の記録』のように、普通ではないハンセン病の重症患者たちの生態を記録した。手や足や目や鼻がなくなってしまう人たちをまのあたりにし、「現実に地獄をみてみたいのならハンセン病の末期病棟にきてみればいい」と書いた。神経が完全に麻痺した患者たちが自分の足首を直火であぶる、そうすると毒が抜けて楽になるように思える。

治療法がわからぬハンセン病患者たちはなんでも試してみる。死んでもいいから治れるものなら治りたい。トカゲを生きたまま丸飲みにするとあらゆる病気が治るという噂を聞けば、食ってみる。

ひょっとして猫も、食ってみる。

鳥小屋を荒らす太った猫がいて仕掛けをつくって捕らえた。ぶ厚い板の下敷きになった猫が平になった。猫のにおいはきついので3日土に埋めるとにおいは完全に消える。目をみないようにして皮をはがし、砂糖と醤油で煮る。脂が少なく、歯切れがよくてうまい、とお年寄りにもすすめている。

ドストエフスキーを熟読していた北條の目に、ドストエフスキーがのりうつった。悲しさだけの世界に、ユーモアと滑稽をみる。

ここにも才能がある。題材だけで勝負しているのではない。

施設から外出許可を取り、編集部を訪ねた北條に会う人はなかった。病気のせいだと自覚した北條は悲しみに暮れる。「もう文学はあきらめよう。自分のような病気の人間に文学なんて生意気かもしれない。でも、文学を失ったら自分には何が残るのだろう」

23歳で死んだ北條民雄が残した数少ない文学を読み終え、続けて他のハンセン病文学を読んでいく、北條民雄の面白さが際立った。(山田)

 

| chat-miaou | 01:01 |
『熔ける』

 

面白い暴露本はないか、と思って読んでいたら、芸能人との交流よりも、会社法違反特別背任罪よりも、大王製紙会長・井川意高(1964年生まれ)のギャンブルが面白かった。

カジノで負けた1068000万円。スケールがでかい。ただ負けているのではない、毎週勝負に陶酔し、興奮し、至福の時を味わっている。

マカオでは1ゲーム2000万円が限度だがシンガポールなら1ゲーム3900万円賭けられると知れば、勝負場所をシンガポールに移す。

目の前に20億円手にしてもやめない。

150万円を4時間半で22億円にしたことだってあるじゃないか」

時間がなくなるまでメシも食わずに賭け続ける。

金がなくなると現地の質屋へ行く。金がなくなったから次回を待つなどということはしない。ブラックカードで300万円のロレックスを10個買い、1350万円借りて勝負する。その金で勝っても勝負が終われば面倒になり、質流ししようとする。いくらなんでももったいないので仲間が質出しに行ってくれたので、お礼に1つプレゼントした。

一度、顧問である父親に20億円の借金がばれて怒られたが、他の借金は内緒にし、ごまかして勝負を続けた。いきつくまでやる本物のギャンブラーで、『麻雀放浪記』のレベルに達している。しかも全てが実話だから面白い。

99パーセントがギャンブルで1パーセントが飲み食い」

勝っても負けても興奮している。

我々が知らないレベルのギャンブルの興奮を知っている。こんな思いを経験できる人はなかなかいない。井川さんの曽祖父は博奕と女で破滅したという。博奕打ちの血が流れている。

1つだけ残念なのは、井川さんは心のどこかでいつも「いつでも借金は返せる」と思っていた。その思いがなければギャンブルの戦績はかわっていたような気がする。実際、財産を処分して借金は全て返済している。

刑務所から出てきたら、今度は絶対負けられない勝負が待っている。(山田)

 

 

| chat-miaou | 01:01 |
歳を取ると1年経つのが早く感じる問題



1年経つのが年々早く感じる。

●3歳児にとって1年は人生の3分の1で、20歳にとって1年は20分の1で、45歳にとって1年は45分の1となり、よって年を重ねるごとに1年の長さが薄まり、1年経つのが早く感じる。

という説がある。

私は、

●35歳までにいろいろなことを経験し、もう新しいことに出会わなくなる。本に飽き、映画に飽き、感受性が衰えるのでコンサートや芝居をみに行くのも面倒くさくなり、変化と刺激がないから退屈な毎日となり1年経つのが早い。

と考えていた。

福岡伸一の本を読んでいたら、

●人間の体内分子の入れ替わりの速度は老化とともに遅くなっていく。体外空間の時間の流れは変わらないから時間が経つのが早く感じる。

という説があり、これが答えだと思った。28歳を過ぎれば老化がはじまるのだからこの説は正しい。

答えを教えてくれた福岡先生のファンになり、著書をみな揃え、福岡先生のいうことはみな鵜呑みにし、頭がよくなっていく気分だった。福岡先生の話には生命根本の疑問を解決してくれるような話が多い。

福岡先生がラジオに出ていて、なぜ歳を取ると1年経つのが早く感じるか解説した。

頭のいい司会者が、

「18歳の私の娘が今年高校を卒業したのですが、高校3年間があっという間に過ぎてしまった、といいました」

というので、頭の悪い私はまた最初から考えなおし始めてしまった。(山田)

 

| chat-miaou | 01:01 |
丸かじりシリーズ

 

うつ病で病院にいく前に東海林さだおの丸かじりシリーズを読めばきっと薬を飲まずに済む。一度抗うつ剤を飲むとなかなか薬なしの生活には戻れないらしい。

気が滅入っていると本が読めない。読書が趣味だった人が本を読めなくなると時間が余ってつらい。

本が読めなくても本屋に通う。通っていればいつか必ず名文との出会いが待っている。

ブックオフに寄ると東海林さだおの本がたくさん108円で売っていた。もう20年ぐらい読んでいないが、久しぶりに読んでみる気になって全部買った。今でも餃子や冷やし中華を食べる時、自然に丸かじりシリーズの文章が頭に浮かんでいる。意識していなかったが、かなり東海林さだおに影響を受けていて、もう文章が脳にしみ込んでいる。何十年も文章が頭に残り、食べ方と飲み方に影響している。串カツにはビールと決めているが、考えてみるとそれも丸かじりシリーズの影響だったと気付く。

若い頃に夢中になった開高健や山口瞳の本を今読むと面白くない。その時代の空気に合った作家がいる。

いつ読んでも面白く、今読み返しても楽しく、100年後も読まれている作家がいる。丸かじりシリーズは100年後も必ず読まれている。必ず全集だって出る。

立ち食いそばの天ぷらそばについて書く作家は多いが、東海林さだおは1989年に「天ぷらそばのツライとこ」(『ワニの丸かじり』収録)を発表している。かき揚げとそばの位置を逆転させるようにしてかき揚げを最初に下へ沈めてしまい、かき揚げをモロモロにしてその食感と油が浮いたスープを楽しむ。これをみなが真似した。この文章が発表されると立ち食いそばブームがきて、天ぷらそばを語る人が多くなった。

影響を受けてパクってしまいそうで怖いから東海林さだおは読まないというプロの書き手もいるが、すでに影響が広過ぎて、誰もが間接的に影響されている。

『ワニのまるかじり』に名文が多い。

●カレーそば 「その手があったか」「ワイシャツを汚さないように気をつけろ」

●一人酒の作法 「することないからメニューを全部読む。支店名の電話番号まで読む。壁にある文字も全てはじから読んでいく。誰でもいいからそばにいて欲しい」

野坂昭如は「これだけ書けばうまくなる」と書いたが、才能がなければこれだけ書けない。言葉が簡単で、しかも面白く、本心からいっているから読者にとてもよく伝わる。文章を読んで笑うことは少ないのに笑える。『アンパンの丸かじり』を読んでいると商品コピーライターとしても必ず一流になるとうなる。

●八宝菜のうずらの卵、二個じゃダメだんですか?

●親子丼の合性はよく、それは親子であるから当然

●スパーの豆乳コーナーの前では声になるかならないかぐらいでコンチワっていう

●鍋焼きうどん、半狂乱ですわ

●「日本人ならほうれん草だろッ、野菜は青じゃなくて緑だろッ」いつか大変なことになる。このへんで正そうではないか

1987年、東海林先生が50歳の時にはじまったこの連載、普通はそのうちあきられる。時代に合わなくなる。歳を取って感覚が読者とずれる。しかし、2013年、76歳の時の『目玉焼きの丸かじり』を読むと、少しもボケていない。ずれていない。文章全体が隙なく面白い。ますます面白い。のどが鳴る。

●冷やし中華のつゆは飲んでもいいのか? 飲みなさい、テツヤ

●客の残したパセリを使い回していると噂になる。パセリは悪い噂を残して捨てられる

●我々日本人はゴハンに敏感で、常におかずとの配分を考えながら食事をする

●城跡、遺跡、古代ローマの劇場跡、跡地は文化遺産であり、弁当のごはん上の昆布の跡地、あの味のしみこんだ跡地はたまりませんわ

●汚れちまったスキヤキに、きょうもカレー粉の降りかかる

●たまーに昆布の佃煮でゴハンを食べたくなる

●誰もが知っていることだが白いゴハンはザーサイに合う

丸かじりシリーズを読むと、その後の食生活がかわる。東海林さだおの言葉が頭の中にしみついて死ぬまでついてまわる。ラーメン屋の前を歩くとかんすいのにおいがしてきて、それがいい匂いなのだとしみじみ気付くようになる。同じラーメンのスープでも、器から直に飲むのとレンゲで飲むのとでは味がまったく違う。スープを飲む度に迫ってくるネギを意識する。ペンネの穴に入ったひき肉が愛しい。

「白菜の漬物は、白いところが好きだったが最近は緑色のところが好きになってきた。少し醤油をつけてごはんを巻いて食べる」「ホー、ポテサラに玉ネギ入っとったか。ホー」「お、タコぶつあるな、あとでたのもう」「手羽とつくねと…と焼き鳥を注文していると、誰かが必ずおしぼりで顔を拭きながら『レバーもね』という」「レバニラ炒め定食は強力にして滋養満点、味最高。傑作中の傑作。食べている人の表情は明るく希望に満ちている」「うな丼を食べる。ウナギにつぐウナギ。合間合間のキュウリのぬか漬けが口の中を洗い流してくれる」「鰻重の途中の奈良漬のサクサクがおいしい」「お通しのちくわの煮たので口の中をしょっぱくしたら冷たい生ビール」「カツ丼の上と下で別盛りで食べてみたいとかねがね思っていた」「みな、気付いていないが実は生卵はうまい。ウニやいくらレベルでうまい。1個300円になっても買うほどうまい」「カニカマをほめると自分の舌を馬鹿にされそうな気がしてみな口に出さないが、実はカニカマはカニと同レベルでうまい」「はなまるうどんの店内を見まわした限りでは、うどん、小、100円の客はぼく以外に一人もいない」「桃を食べると汁がひじまでたれてくる。桃は流しで食べる。風呂で全裸で食べる。シャワーを浴びながら食べるといい」

丸かじりシリーズを読むと自炊をはじめる。外食もしたくなる。読んだものを食べたくなる。

『トンカツのまるかじり』を読んでいると外食に出掛けたくなった。

●熱い餃子をかじると人は上へ上へと立ち上がってしまう。餃子は一口で口に放り込んではいけない。半分かじったところを愛情をこめてうっとりとみつめる

●梅干し一個だけの日の丸弁当に挑戦

●人間ドックを終えて何を食うか? とんかつにビールだ

丸かじりシリーズを読み進めていけば必ず食べたいものが登場する。一切難解なことが書いていないから面白いテレビ番組をみるぐらいの感覚で読める。丸かじりシリーズより楽に読める本はタレント本か対談本か漫画か児童書となる。

ありがたいことに東海林さだおの著作は多く、しかもどれもよく売れているので、ブックオフで108円でたくさんみつかる。数軒ハシゴすれば軽く10冊以上はそろう。丸かじりシリーズだけで39冊ある。

東海林先生は志ん生の落語を繰り返し聴き、太宰治全集を繰り返し読む。それらが教養のベースとなっているから読みやすくて楽しい。日々取材をしているから新しい発見が多く学ぶことも多い。毎日スーパーにいき最新の食べ物を選び、自炊し、外食もする。値段の高いものを嫌うので誰でもすぐに真似できる。どこにでもある食べ物ばかりで誰もが同じ経験をできるのにあんなに楽しい文章を書ける人はいない。

牛丼の松屋、天丼てんや、富士そばに通い、男一人で堂々と西荻窪の西友に毎日買い物にいき、楽しそうに多い時は二度も買い物かごにうまそうなものを仕入れていく。そんなことを書き、しかもその姿がかっこいい。ケチなのではない。せこいのでもない。ケチな人、せこい人はみている人を本当に嫌な気分にさせる。

無駄づかいが愚かでみっともないことだとわかる。独身男性読者は真似して堂々とスーパーに食材を買いに出掛け、買い物かごにうまそうなものを入れていく。

●「冷やし中華はじめました」の貼り紙をみて、「そうか、はじめたのか」と思う人もいれば「はじめたきゃ勝手にはじめればいいだろ!」と機嫌の悪い人もいる(『タコの丸かじり』)

東海林先生は漫画家だから人間観察も面白い。文章が頭の中に映像となって残り、外食先で登場人物たちの姿がよみがえる。

●バイキングにくる家族連れはみな興奮している。席に着くと武者震いをはじめ足がガクガクいいはじめる。戦闘態勢に入り相撲の高見盛のように顔や体をパンパン叩いている(『コロッケの丸かじり』)

気が滅入って何もできない時は丸かじりシリーズを読む。次から次に読み進めていくうちに何日か経ち、気付くとうつ状態から脱出している。(山田)

 

●丸かじりシリーズ

1『タコの丸かじり』

2『キャベツの丸かじり』

3『トンカツの丸かじり』

4『ワニの丸かじり』

5『ナマズの丸かじり』

6『タクアンの丸かじり』

7『鯛ヤキの丸かじり』

8『伊勢エビの丸かじり』

9『駅弁の丸かじり』

10『ブタの丸かじり』

11『マツタケの丸かじり』

12『スイカの丸かじり』

13『ダンゴの丸かじり』

14『親子丼の丸かじり』

15『タケノコの丸かじり』

16『ケーキの丸かじり』

17『タヌキの丸かじり』

18『猫めしの丸かじり』

19『昼メシの丸かじり』

20『ゴハンの丸かじり』

21『どぜうの丸かじり』

22『パンの耳の丸かじり』

23『ホットドッグの丸かじり』

24『おでんの丸かじり』

25『うなぎの丸かじり』

26『パイナップルの丸かじり』

27『コロッケの丸かじり』

28『おにぎりの丸かじり』

29『メロンの丸かじり』

30『どら焼きの丸かじり』

31『ホルモン焼きの丸かじり』

32『いかめしの丸かじり』

33『ゆで卵の丸かじり』

34『アンパンの丸かじり』

35『レバ刺しの丸かじり』

36『サンマの丸かじり』

37『目玉焼きの丸かじり』

38『メンチカツの丸かじり』

39『シウマイの丸かじり』

 

●対談集

●『軽老モーロー会議中』(赤瀬川原平と1)「一生のエネルギーは決まっている」「老眼は訓練すればみえるようになる」

「そんなにおいしくなくてもいいや」

「電車でキスしてるような連中にいい奴はいない」「テレビって全部フリでしょ」

・ゲスト 林丈二

・ゲスト 山本夏彦「あの人たちは2000年前のローマ人と同じ人です。昭和初期に銀座を歩いていた人とも同じ。人間ではなく細胞で、またすぐ生まれ変わってくる」「老人になるとうまくなるなんてウソです」「手形を振り出さなければ会社はつぶれない」

・ゲスト 安部譲二「英雄伝を読むとたいてい25歳で頭角を現す。30歳になって読み返すと俺の人生はダメだって思う」「ハゲたら死のうと思っている」

●『ボケかた上手』(赤瀬川原平と2

「ギャンブルは時間がもったいない」

「やっぱり仕事でしょ」

「売れる前は、世に出て活躍している同業者をみて、あんな奴がなぜ、と思っていた」「自分の人生の流れと世の中の流れとの関係」「群れの中にいる安心」「向こうは無意味に熱を発しているだけなんだけど、基本は太陽」「オーラの正体は、あらかじめこちらに受け入れ態勢ができている」「しゃべると論理になって説明がついて反論されちゃう」「本気でクヨクヨしたら簡単に痩せられる」「歯、目、マラの順番に弱る」「ハゲのいうことは真面目に聞かない」「ごちそうさまって、店の人も忙しいから迷惑なんだよ。いちいち答えなきゃなんない」「葬式って親族にお辞儀して左側にお辞儀してお焼香してまた親族にお辞儀してわけわかんなくなる」「猫は気持ちいいから寝てばかりいる。嫌なら寝ない」「ロスチャイルドやロックフェラーも大変だよ。ほっといても金が増えちゃう」「20歳の時胃を3分の2切ったから肝臓にダメージがいくほど暴飲暴食できない。僕だけ今でも薬も飲んでない。一回切ったらどうしても気を付けるようになる」「ハゲの反対の悪口ないかな。この毛むくじゃら! とか、生え過ぎめ! とか」「生きていくの大変なんですよ」「あらゆる生物は命を殺して食べる。あれ、なんとかしてほしいね」

・ゲスト 椎名誠「旅は好きじゃない。変化のない生活の方がいい」

・ゲスト 豊田泰光

・ゲスト 黒鉄ヒロシ「酒場で働く人の目的は経済獲得」「仙人を自覚した途端に仙人ではない」

「メスは能力の高いオスにやらせる」

「こまやかな美男子ぐらいじゃ、モテるまではいかない」

・ゲスト 鹿島茂「女の人が好んでいるのは挿入ではなくクンニリングスである」

●『老化で遊ぼう』(赤瀬川原平と3)「外国人は鈴虫の音色を雑音だと感じるが、日本人は情緒を感じる」「例えばゴッホを好きになると良さがどんどんみえてくる。感受性が広がる」「若い頃は意味を求める。歳を取ると意味は蒸発する。精神を卒業してからよくなる」「遊郭は道がすごく広くて両側にお店があって赤い灯りがついてて、みんな浴衣着てユラユラしてて天国みたいな感じだった」「僕らは字をいっぱい書いてきてるでしょ。そうするとやはりいい字になる。その人なりに」「ハナクソは誰でも必ずほじります」「宇宙開発って、大金つぎこんでるけど、たぶん使えない」「朝から音楽なんて聴きたくない」「映画なんて一回みたらおしまいでいいじゃない、もう一回見てたら人生が二倍かかる」「ビデオの留守録ができない。家にいないのに機械が勝手に何かやるなんておかしい」「携帯はもってるけど、うちに置いてある」「僕も携帯はもってるけど電源切ってる」

・ゲスト 藤森照信

・ゲスト 阿川佐和子「白髪は放置せざるをえなくなってくる」

「下の白い毛を抜いていると背中が痛くなってくる」「子供を産むのは物理的にもう無理、そう割り切らないと前へ進めない」「仕事もしないで一日過ごしていくなんて嫌だ。うつ病になる」「嫉妬がからまないのは真の愛情ではない」

・ゲスト 藤原正彦「潰される寸前ぐらいまでいってもうダメだと思った時に、やっとひらめく」「主張が多いと収入は少ない、主張が少ないと収入は多い」「バストのサイズと知能指数の和は一定である」

「フィールズ賞取るような一流の数学者は何十年も一日十何時間数学やって全然苦痛に感じない」

「男のズボンにはポケットがたくさんあるが女のスカートにはない。男はポケットに夢をつめる。女は地に足がついている」

●『うまいもの・まずいもの』(赤瀬川原平、奥本大三郎と)

「洗剤がない頃、ゴキブリが器をかじる。だから御器かぶり、ゴキカブリ、ゴキブリになった」

「禅坊主はおかゆと沢庵で長生きしないらしい」「草で目を傷つけないように馬の目は横にあり、まつげが長い」「コンビニがあれば女房はいらない。結婚する人が少なくなり、子供も少なくなる」「納豆は慣れれば外国人も食べる」「そばがきはまずいといえばまずい」「納豆はインドネシアにもある」「食べ物のうまさは個々の主観、好み、タイミングがある、状況を食べている、にせの記憶、虚構の世界」「ビールってみんな同じでしょう」「シャンパンっておいしいと思ったことない」「はっきりいえば、高いものを飲ませたんだから、やらせろ」「仲良く分け合うのは生物の生き方に反している」「ご馳走を前にして食べないで帰ることが多くなる」「フランス人は本当にたくさん食う」

●『人生途中対談』(椎名誠と1)「白いご飯は熱いというのが大事」「貧しくてサツマイモ食べてた人間が味なんてわかるわけない」

CM出るとその後の人生が変わっちゃう。どこいっても顔がわかっちゃうと普通の生活ができない。お金は欲しいけど」

「体が欲求しているものはみんなおいしい」「どうせ自分の実力はここまでしかないんだからしょうがないと思うと楽になる」

「もういい、いろんなことだいたいわかってきた」

「非常に冷静。わかるんだもんはっきりと。いろんな可能性があるのは、やっぱり登っている時」「普通の人は銀座と縁がない」

45歳というと居場所がだんだんなくなってくる」

「行く飲み屋は全部で5軒。それで十分」

「あえて面白くないやつとつきあってそういつをかえようとかそんなこと思わない」

「自分の能力とか才能がみえているからもうひとふんばりはしない」「アカデミズムの復活っているのは絶対あると思う」「45歳から55歳ぐらいはかなりのことがわかってくるけど欲望的なものは残っている」

「中華料理のツバメの巣がすごいなんていう時も人生にあったが、それももう知ってしまった。大きな変化がなくなる」

「机に6時間ぼんやり座っていても集中しなければ意味はない」

「最近はあまり外へ行かない。テレビみながらビール飲んで11時には寝ちゃう」

「新しいバーに入ってみようなんて思うのは30歳までかな」

「カラオケは充実ではない。発散というか拡散というか浪費」

「醤油が焼けるにおいは世界最高。吸引力があるから人が寄ってくる」「イカは味がでちゃうからおでんに向かない。全体がイカになってしまう」「おでんは人の話をみんな聞いている」

・ゲスト 沢野ひとし「唐辛子が入っているとみんなおいしくなる」

●『シーナとショージの発奮忘食対談』(椎名誠と)は『人生途中対談』(椎名誠と)を文庫化改題したもの。

●『大日本オサカナ株式会社』(椎名誠と)も『人生途中対談』(椎名誠と)を文庫化改題したもの。新たな対談が一つ加えられている。

●『ビールうぐうぐ対談』(椎名誠と2)「まともな神経なら贅沢はできない」「ボウリングでストライク出して、戻ってくるときの表情は難しい」「変なジーンズはいて若返りしている人」

・ゲスト 岸田秀

・ゲスト 高田榮一

・ゲスト 沢野ひとし

●『やぶさか対談』(椎名誠と3

・ゲスト 田嶋陽子

・ゲスト 川口隆史「20年かけて30万本包丁を売った。テレビ通販だと数年で同じくらい売れる」

・ゲスト 大江健三郎

・ゲスト 沢野ひとし

・ゲスト ドクター・中松「イージーなやり方では、一般の人を超えることはできない」「ビールは忘却の薬」

・ゲスト 大村明彦

・ゲスト 鈴木その子

●『人生太っ腹対談』(椎名誠と4

・ゲスト 冨田勝「ミミズも人も40億年前は祖先が一緒」「紫外線や煙草でDNAの文字列がかわりガンになる」

・ゲスト 新井和響「大食いは歯がダメになる。舌の前歯以外は自分の歯ではない」「痩せている人は食べ過ぎると下痢をする。体格のいい人は吸収して糖尿病になる」「水分をとらないと麺は胃の中で固まり消化できなくなってしまう」

・ゲスト たま

「理想の店に出会えない。一生で一軒、ぐつろげる店ができたら素晴らしい」

・ゲスト 田尾和俊「高松では抜群の麺を出すうどん屋でも裏に回れば濃縮ダシ醤油のボトルがごっそりある。それぐらいダシはどうでもいい」

・ゲスト 小野員裕「スーパーで売ってるナンを電子レンジでやわらかくして野菜とかハムとかくるむとうまい」「味噌は日本人のDNAに刻み込まれた味わい」

・ゲスト 小山薫堂「5位カツ丼、4位レバニラ炒め、3位串カツ、2位かき揚げそば、1位牛丼」「世界的に食の傾向が肉から離れようとしている時代」

 

 

| chat-miaou | 01:01 |
『堕落論』

 

テレビで坂口安吾の「堕落論」を解説していて出演者たちがうなずいていたが、安吾は恐ろしい。

「堕落論」と「続堕落論」が収録されている文庫『堕落論』には友人・小林秀雄にかみついた「教祖の文学」、友人・太宰治を絶賛した「不良少年とキリスト」「太宰治情死考」なども入っていて、文学入門書になっていて、『堕落論』をきっかけに無頼派になる若者がたくさんいる。

安吾の文学は難しいから読みにくい。『堕落論』は難しくなくて面白い短い文章ばかりが並ぶ。

安吾の行動はアナーキーで好感がもてる。作品よりも行動に影響を受ける。ストリップ小屋の二階から一階にダイブする。カレーライスを100人前注文して公園の芝生に並べてみる。覚醒剤中毒になる。日本語で考えるという思考の枠を取り払うために日本語からもっとも離れた外国語を学ぶ。友人・檀一雄が安吾の伝説をたくさん書き残している。

若いうちに安吾を読むと自分も殻を打ち破りたくなり、ワインとウイスキーのストレートを一気飲みして、どこか違う世界にトリップしてみたくなる。突然二階から飛び降りたくなる。ドラッグを試してみたくなる。堕落したくなる。文学がわかったような気がして興奮し、話したいことや伝えたいことがたくさんで一晩中酒を飲んでも話が尽きないが、周囲の大人にとっては迷惑でしかない。

安吾が『堕落論』ですすめる孤独はこれまでのどの孤独論よりも名文で、若い読者の心を確実にとらえ、影響を及ぼす。誰もがたった一人で荒野を歩きはじめるが、ほとんどは安吾のように偉大にはなれず、ただ世間から相手にされない文学崩れになり、まともな社会人にならない。『堕落論』をきっかけに作家や何者かになれた人はいるが、それよりもずっと多くが警察、刑務所、病院に行く。

「戦争を起こしたのは誰か? 東條英機か? 東條でもあるが、東條でもない。決して逆らえない歴史のうねりのようなものが起こしている」

私は編集者になり、何人か政治家にインタビューした時、いつも『堕落論』のこの言葉を思い出して政治家に質問した。

「学校で一番志の高かったであろうみなさんがどうして政治家に当選すると、みな同じような普通の政治家になってしまうのですか?」

答えをまとめるとこういうことらしい。

「個人の意見を完全に貫き通すと、政治団体に所属できない。はみ出し、追い出されてしまう。結局政治家としても生きていけなくなる。世界史に名前を残した政治家たちも、今のように管理のゆき届いた世の中で同じような実績が残せるかどうかわからない」

歴史や団体のうねりを感じる。マイナンバーで一人残らず管理できる世の中で、はみ出し者は許されない。みなと同じように生きなければならない。

安吾や太宰が今の世の中で同じようなことをしていたら刑務所から出られない。

『堕落論』は有害で親が子供にもっとも読ませたくない本だといえる。一度読んだら戻れない。私も『堕落論』に感動し、影響され、安吾の全集を揃え、アル中になった。

安吾と太宰と織田作之助の無頼派鼎談が二度行われ、3人のファンはどうしても読みたくなる。この座談会の帰りにあの有名な銀座ルパンでの写真が撮影された。今では文庫にも収録されていて簡単に読めるようになったが、この鼎談は不思議なことに全然面白くない。絶対面白いはずの夢の3人が揃って話をしているのに全然面白くない。私はこの本を3度買って読んだが、面白くないので今だに内容を何一つ覚えていない。(山田)

 

 

| chat-miaou | 01:01 |
『失踪日記』

 

 


これまでがぜいたくすぎた。

財布の中に千円札一枚あれば十分な生き方をしたい。十代の時はできたのだから、今でもできるはずだ。

問題は酒だ。

することないからそんなことばかり考えながら吾妻ひでおの漫画『失踪日記』を再読したら本当に面白い。面白くて泣ける。全ページ面白くて哀しい。続けて繰り返し3度読んでもまだ飽きない。読み返す度に時間がかかるようになり、もったいなくて一字一句読み逃さないように味わっている。

「夜を歩く」というタイトルだけでジーンとくる。自殺に失敗してホームレスになった吾妻先生は、人に会いたくないから夜を歩いてゴミを漁る。小鳥と会話し、拾った期限切れワインを楽しみ、食後のデザートに使い古されて捨てられた天ぷら油を飲む。

傘の柄で地面を掘ってトイレをつくる。クリスマスイブの数日後には鶏肉を楽しむ。大量の食料を拾って太る。人と話をしないのでもう一人の自分をつくって会話する。たまにお金を拾って日本酒を買う。図書館で晩酌する。

次から次に面白い。

そのうち公園でスカウトされて配管工になりアパートに入居、鳥の唐揚や厚揚げで酒を飲み、締めにみそラーメンまで食べるようになる。

「ホームレスやってると働きたくなる、肉体労働やってると芸術がしたくなる」

人間関係に疲れ配管工をやめ、漫画家に戻り、アル中になる。

アル中病棟の仲間が魅力的で、外出許可をもらいワンカップ15本飲んでぶっ倒れ、救急車で帰ってきたりする。

「吾妻、死にたいだろ?」「死にたいなー」なんて会話がとても哀しい。

吾妻先生の『逃亡日記』を読むと、『失踪日記』は二十数万部売れたという。こういう作品をもっと読みたい。

『逃亡日記』によると、吾妻先生は煙草代が月に二万円あれば、それでやっていけるようだ。(山田)

 

| editor | 01:01 |
藤沢秀行


じっと時が経つのを待っていたら、やっと気分がよくなってきた。長く酒浸りだったがそのうち体が疲れ、二日酔いで1日飲めないままでいたらそのまま3日禁酒でき、体が回復し、図書館に出掛けよう、と久々に思った。

気分が滅入っている間は、言葉に敏感になる。テレビをみても本を読んでも、何か元気が出るような言葉を求めているのに、さらに気の滅入るような報道や発言ばかりが入ってくる。不況なので仕方がない。今はみなじっと耐えている。

なかなか本が読めないので、できるだけ軽い気持ちで読める本をブックオフでたくさん買ってきて、読めるところから読んでいった。

阿川佐和子の対談集「この人に会いたい」シリーズは面白い。阿川佐和子はいつも相手の肝心なところをきちんと聞き出してくれている。

●『阿川佐和子のアハハのハ』(この人に会いたい2

・白洲正子「何でも好きなら成長する。ただし、ひどく好きでなくてはならない。夢中にならなくてはならない」

・黒澤久雄「黒澤明にはロシア人の血が流れているらしい」

●『阿川佐和子の会えばドキドキ』(この人に会いたい7

・福岡伸一「コラーゲンを摂っても普通に消化されているだけで精神的効果のみしかない。実はインスタント食品だけでも人間の体は3か月は栄養不足にはならない」

●『阿川佐和子のガハハのハ』(この人に会いたい3

・宮本浩次「職業として音楽をやっている以上、売れなきゃ話にならない」

・藤沢秀行「ガン宣告を受けても全然驚かなかった」

藤沢秀行先生の言葉には勇気づけられる。生き方が発言に現れているから何を話しても面白い。

稼いだお金を女性にあげちゃう。秀行先生の愛人の息子が家に遊びにくると秀行先生の長男が会社帰りにケーキを買ってきて、愛人と家族ぐるみの付き合いをしている。胃ガンになっても酒を飲む。リンパガンになっても煙草を吸う。「死ぬときは死ぬ」「世の中にはもっと恐ろしいことがいっぱいある」「借金は恐くない。ただ、疲れる」

「秀行先生のように逆境に負けずに生きて行くにはどうしたらいいんですか?」「あなたはガンで間もなく死にます、と言われても、何だそのくらいのことで、という気持ちを持って欲しい。今も何もあきらめていませんよ。なるようにしかならない」

救われる思いがする。なるようにしかならない。(山田)

 

| chat-miaou | 01:01 |