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なるほど! 整理術 捨てられないもの編

 

もたない男は常に部屋中をチェックしている。自分の持ち物はキーホルダー一つまで全て把握している。机の引き出しに何が入っているか全てわかっている。そういうのが面倒くさいから引き出しの中には何も入っていない。引き出しは無駄になり捨てる。机も無駄になり捨てる。無駄なもの、捨てるものはないか部屋の景色に常に目を光らせている。ちょっと迷ったら捨ててみる。迷うぐらいならまずは捨ててみる。捨ててみれば必要かどうかよくわかる。捨てれば捨てるほど捨てるものがなくなり、捨てて後悔するものなどなくなる。

それでもどうしても捨てられないものが色々ある。

冬、体を温めるために熱いスープを飲みたくなる。コーヒーやインスタントスープを飲むためのお湯を沸かす電気ケトルを買うが、これだけでは我慢できない。一つの欲望が広がりエスカレートしていく。野菜の入ったスープが飲みたいから鍋が必要となり、ガスコンロがどうしても必要になる。野菜をきざむまな板も包丁も、スープを入れる器も必要になる。

どうしてもゴハンが食べたい。おいしいゴハンが食べたいから炊飯器を買いたいが、炊飯器は荷物になる。頭の中で「もたない、もたない」と念じてチンするゴハンで我慢する。チンするゴハンなら食べ終われば部屋から消えてなくなる。おいしいものも限りなくエスカレートしていく。

炊飯器より電子レンジの方が大きくて重い。しかし、存在の大きさが違う。電子レンジはゴハンをチンする以外につかうことはないが温める時間は1分しかかからない。炊飯器の場合、ゴハンが炊けるまでに30分かかる。腹が減っているからゴハンを炊くのに、炊き上がる頃にはもう他のものを食べて満腹している。食べる時間にタイマーを合わせると、外出中落ち着かない。今、家でゴハンが炊けていると思うと外食ができない。米を2キロかっておけば、自然にそれを食べなければならないから米を中心にスケジュールを組む。炊飯器によって決められた未来にうんざりする。電子レンジにはそういう束縛がない。たまにゴハン以外の食べ物を温める時、水気が破裂してレンジの内部が汚れないように皿に覆うサランラップが必要なだけだ。

体を温める風呂とシャワーも絶対に必要だ。冬、水で体を洗えば死ぬ可能性があるし神経痛になる。風呂は気持ちいい。風呂に入って体を洗い、ひげをそれば、気分がスッキリして全てをやり直せる。熱い風呂に入って汚れを落とせば一日に何度でも、気持ちよく人生をリセットできる。

暖房がなければ神経痛になるが、冷房がなくてもどこも悪くならない。こごえて病気になったり死んでしまうことはあるが、老人でないかぎりいくら暑くても部屋の中で死ぬことはまずない。沖縄をみれば明らかに暑いのは体にいい。しかし、暑くてベタベタしてムカムカしている時、風呂に入って全身着替え、クーラーをつけるとサラサラして快適で、ここ1年で最高の体調になる。

一人で暇になると女の裸がみたくなる。どうしてもアダルトDVDは捨てられない。DVDをみるためにはDVDプレーヤーもテレビも必要になるから何度もエロ本で我慢しようとしたが、刺激が違う。美しさが違う。AV女優の動画をみないで生きていくことはできない。あんまりそろえると死んだ後に恥ずかしいから2枚までにしている。孤独死の取材をした時、孤独者の死後、たくさんのアダルトDVDが残されることは多い。死後、これが必ず話題になる。どうしても捨てられない2枚だからこそ、1000回でもみることのできる傑作が手元に残ることになる。1000回みるにたえる映画やテレビ番組なんてない。誰だってアダルトDVDをみたい。

蒲団も枕も必要だが敷布団は必要ない。

冷蔵庫に缶ビールを冷やしておくか何度も迷ったが、「もたない、もたない」と念じてみれば、必要ない。ウーロン茶もコーラも突然飲みたくなる時がやってくるが、冷蔵庫に入れておくと飲みたくない時も飲んでしまう。酒は体に悪いからできるだけ遠ざける。水は飲まないわけにはいかない。冷たい水を飲みたい。

冷蔵庫を捨てた時、冷たい水が飲めず、苦しみもがいた。二日酔いで目覚めた夜中、自動販売機までよく冷えた水を飲みに行った。コンビニの水より、自動販売の水の方がよく冷えている。何度も自動販売機に走り、水と冷蔵庫の大切さを知った。

肉も、魚も、油も酒も食べる必要はない。食べない方が明らかに体調がいい。体が軽い。だから買って帰らないし、部屋に持ち込まないし、冷蔵庫に入れない。人からもらったら思い切って捨てる。もったいないといって体を壊すより、罪悪感を感じてでも捨て、健康でいたい。人にあげるのはいろいろ面倒くさい。もらった方が嬉しいとはかぎらない。

どんどん捨てて、手元にないと色々欲しくなる。捨ててしまった志ん生の落語のCDをまた聴きたくなる。図書館に借りに行こうか迷うと「もたない、もたない」と念じる。迷った時は念じる。借りてしまえば返しに行かなければならない。その面倒を考えると借りなくて済む。そこまでして聴きたいわけでもない。本当に必要なものは迷う前に体が入手に動き始める。緊急に必要なものなら、体が自然に走って入手に動き出す。ものを捨てていくとそういうことに気づく。本当に必要なものがわかってくる。どうしても必要なものがある。

生きる希望を維持するためには読書が必要になる。東海林さだおの丸かじりシリーズ、根本敬のエッセイ、洲之内徹の気まぐれ美術館シリーズ、岸田秀、獅子文六の『わたしの食べ歩き』あたりは何度も捨てたが何度も買い直し、今も手持にある。本棚はもたない。

『ナニワ金融道』と『ブラックジャック』は何度もブックオフに通い108円で全巻そろえているが、漫画は場所を取るから読み終わったら捨てる。どうせいつかまた買うから捨てないでおきたいが、そういうわけにもいかない。どちらか一つを選ぶとしたら『ナニワ金融道』をおいておく。

CDはアイチューンに入れたら捨てる。アイチューンに入れた曲もできるだけ削除する。CDは図書館でもかなり色々借りられるし、どうしても聴きたい曲はユーチューブでいつでも聴ける。アイポッドは軽くて快適だが、余計なものは持ち歩きたくないからもって出掛けることはない。

レシートは受け取らない、受け取ったレシートはごみ箱を探して捨て、家に持ち帰らない。電気製品の箱は店においていく。保証書も捨ててしまう。捨てる基本フォームが身につくと、世の中にゴミ箱が少な過ぎることがよくわかる。

もたない男は常に線引きしている。冷たい水は絶対冷蔵庫に冷やしておきたいが、コーラやウーロン茶はいらない。体をあたためてくれ、無駄なカロリーのないコーヒーは必要だが、インスタントコーヒーで十分でドリップコーヒーはいらない。ドリップコーヒーはゴミが出る。紅茶や緑茶のティーパックもゴミになる。飲んだらこの世から消えてなくなるインスタントコーヒー一つでいい。砂糖もいらない。譲れないところがある。炭水化物は白米のみで、そばもパンももたない。

ないものは食べない、あるもので済ますが、おいしいものを食べる、体にいいものを食べる。食べたいものを食べたいからせめぎ合う。突然パンが食べたくなり、買いに行く。そば屋に行く。ラーメン屋に行く。東海林さだおを読んでいて、炊き立ての熱いゴハンが食べたくなり、。やはり炊飯器が欲しくなる。線引き判断は日々死ぬまで続く。

ずっと一緒にいたい女性に出会えた人は、自分だけの持ち物では済まなくなる。子供ができたら子供がみじめな思いをしないようにきれいな住居も必要となる。

仲間や友人は、人生のその時々で求めるものが違うので必要ない。財産や介護や借金や保証人でもめるから親戚もいらない。

炊飯器は必要かもしれない。なくても生きていけるが、あった方がよりよい人生を送れるかもしれない。重荷になることはわかっている。ここ20年で10回以上捨てたが答えはまだ出ていない。炊飯器は常にギリギリの線引き上に位置している。(山田)

 

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