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冬のおでん

 

半袖ではいられなくなり、カーディガンを着るようになると獅子文六を読みたくなる。体が覚えていて、読まずにはいられなくなり、本屋で中公文庫の『私の食べ歩き』と『食味歳時記』を買い、一気に読む。読み終えておでん屋に行かずにいられる日本人はいない。

開店時間の5時におでん屋へ行く。誰もいない一番客でおでんと真剣に向き合う。マスターもまた来た、という顔で私をみる。明日も行く。それほどおでんが好きなのか、と聞かれれば、想像している何倍もおでん屋に感謝している。毎晩興奮しながらおでんを食っている。

瓶ビールと熱燗を頼む。ビールで口を冷たくしてから熱燗を飲む。獅子文六の真似をしながらおでん屋で飲み食いするとなんとも楽しくうまい。

枝豆がある。そら豆もある。今日はそら豆にする。

獅子文六は季節によって枝豆かそら豆を毎日食べる。冷凍食品で一年中食べられる今の時代を彼はどう思うのか。いや、そんな時代には獅子文六のような文章を書ける人は生まれない。昔の文章に感動し、それを真似ていればいい。

瓶ビール、熱燗、そら豆、店に漂うおでんの香りだけで十分だが、おでん屋でおでんを頼まなければ店に悪い。文六はおでん屋に入るとその店のおでんのネタの原料の良し悪しまでわかるというが、そんなものはわからなくていい。そら豆も冷凍でもありがたい。そこにいてくれるだけでありがたい。おでんは何を食っても熱くてうまくて熱燗に合う。

獅子文六は豆腐が大好きで、豆腐の栄養と製造方法、豆腐の知恵とうまさをわからない人間にあきれている。豆腐を絶賛し、読んでいると豆腐を食べずにはいられない。豆腐を食べなければ損をする。おでん屋で豆腐を食べられるなんて、どれほど幸せなことかという感謝の気持ちで一杯になる。

豆腐、大根、ちくわぶを頼む。これでおでん屋への義理は果たした。

おでん屋のからしってツンときてうまい。出汁に合う。何に塗ってもうまい。脳にまで刺激がツンと斬り込んできて酔いが回る。

もっと食べたくなってメインにがんも、はんぺんで〆る。

獅子文六を読んでよかった。読めば読むほどおでんがうまくなるからこの2冊はしばらく捨てないでおこう。当分おでんがうまくてたまらない。朝から夕方のおでんが楽しみでたまらない。(山田)

 

 

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