Entry: main  << >>
あなたの知らない世界 2

 

鈴木先生は今は作家だが、昔は定時制高校の先生だった。

鈴木先生と酒を飲んでいて、いろんな話をしていて、私も定時制高校に通ったことがある、というと、鈴木先生の目つきがかわった。

「え! 暴力ふるわないでね」

鈴木先生は定時制高校の教師だった頃、何度か生徒に殴られた。とても真面目で勉強熱心で博学な鈴木先生の授業を受けられる価値がわかる学生はいなかった。

私が定時制高校に通ったのは1980年代、鈴木先生が勤めていたのは1990年代、定時制高校のレベルは低かった。

私の通った定時制高校に真面目な勤労学生は少なかった。40人近いクラスで、正社員として就職していた学生は1人しかおらず、それも自分の親の会社に勤めていた。昼間することがないからアルバイトをしたが、ほとんどは普通高校の入試に受からないから定時制高校に通っていた。

鈴木先生が勤めた定時制高校にも真面目な勤労学生は少なかった。少ないというよりほとんどいない。ほとんどがただの不良で、その中にほんの少しだけ真面目な勤労学生や、遅れて学校に入りなおした人、貧しくて昼の学校に通えない学生がいる。

定時制高校というと世間には苦労人のイメージがあり、それが映画になっていたりするが、山田洋次監督の映画で描かれたような世界はみたことがないし、きっと存在しない。

半分以上は普通の高校生だったが、先生をにらみつけ、酒と煙草とシンナーを持ち込み、暴力団の話をしてクラスメートを脅し、トイレで大便を流さず、勉強する気などいっさいない人たちがいた。私は年下の不良に蹴りを入れられ、やり返すこともできずに屈辱だった。普通の高校に行けなかっただけで、それでも人並みに学歴が欲しくて、一人で社会に出て行くのが嫌で、定時制高校にきて誰かと関わっていたい人たちがいた。クラスメート全員と話したことがあるが貧しい家庭の子は一人しかいなかった。今は貧しい家庭が増えたから真面目な勤労学生も増えているかもしれない。

警察に補導されたり、シンナーを吸って歯が溶けていたり、強姦で逮捕されたり、義務教育を終えて高校生になってもあいかわらずいじめる相手を求め、話に辻褄の合わないウソばかり、一刻も早くこういう人たちと別れたかった。こういう人たちが定時制高校を卒業することはなく、レベルの低い順に学校を去っていく。私も卒業できず2年で去った。各教科のたくさんの先生がぶち切れ、やる気のない我々生徒のレベルの低さを嘆くことが多かった。「学校にくる意味があんのかよ?」とブチ切れて怒鳴っていた。

鈴木先生がラジオ出演したので聴いた。作家になる前の定時制高校の教師時代の話になると、突然穏やかだった口調が変わり、当時の恨みを語りはじめた。(山田)

 

 

| chat-miaou | 06:01 |
スポンサーサイト
| スポンサードリンク | 06:01 |