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尾崎豊

 

スナックで尾崎豊のアイラブユーを唄う人が多い。歯抜けおやじも唄うが若いカップルの男も隣の彼女にせがまれて唄う。おばさんも四谷怪談のような裏声で情感たっぷりに唄う。何十回もスナックで聞いたことがあるから、全国で老若男女が唄っている。

アイラブユーを聞いた20歳の若者が、尾崎が好きだという。

「あの3曲は僕の周りもみんな唄いますよ」

というので、「?」となった。尾崎豊がブレイクして大人気になった1985年、私は15歳だった。

「尾崎の他の2曲ってなんだ? 『15の夜』? 『卒業』? 『セブンティーンズマップ』?」

「違いますよ『オーマイリトルガール』と『シェリー』ですよ」などといっている。たぶん彼の周囲だけの独特の解釈だろうが、昔のファンが選ぶ3曲とは全く違う。時代が移り変わっているのがよくわかる。

「『15の夜』って盗んだバイクで走り出すやつですよね? 今時、バイク盗む奴なんていませんよ。自転車盗んだってすぐに捕まる。昔の不良って、ブチ切れて窓ガラス割ってたんですよね。そんなことしたら防犯カメラに映ってすぐにつかまっちゃうじゃないですか、昭和だなあ、昔はのんびりしていたんですよね、自分がケガするだけじゃないですか」

なんだかバカにされているような気分になってきた。反抗期も昔と今では違う。少子化で草食系で大切に育てられた子供たちは万引きしないし、バイクも盗まないし、ものを壊さない。お母さんと楽しそうに話しながら歩いている十代の男の子をよくみる。反抗期についても親子で仲良く話し合っているのかもしれない。昔はああいう子はいなかった。親といるところをみられるだけで恥ずかしかった。親と話すのが嫌で暴力をふるってしまい、それでいて後で後悔していじけているような子が多かった。夜の校舎で窓ガラスを壊して回る尾崎のおっかない反抗期ソングに共感するわけがない。

確かに尾崎は恥ずかしい。恥ずかしいがあの曲を作った当人が死んでしまっているのだからあまり恥ずかしくない。

田舎の中学の不良はみんな尾崎豊を聞いていた。弱い同級生からカツアゲするような不良たちが尾崎の詩をいたるところに落書きし、卒業後に進学校にいくような優秀な同級生が汚い字で書かれたそれらの詩を読んで迷惑そうに嫌な顔をしていた。

成人すると過去の自分が恥ずかしくてなって尾崎を聞かなくなったが、時が経ち、汚らしい野蛮な不良が街から消え、尾崎のラブソングに再評価が続いた。昔は反抗期ソングが衝撃だったが、今はラブソングが人気になっている。1987年に放送された『北の国から 初恋』でアイラブユーが誰もが知っている曲になった。

死んでから25年以上経つのに、まだ人気が高まっている。ファンが入れ替わっているのがすごい。昔の日本人ロックスターのライブに行くと、観客も一緒に高齢化しているのがよくわかるが尾崎は違う。懐メロにならずに新しく生まれてきた優秀な若者たちが尾崎豊のファンになる。26歳で死んだ尾崎豊は太りやすくダイエットに苦しんだ。太った白髪のおっさんになる前に死んでいったのも結果的に新しい若者支持につながっている。

昔発表された曲が再評価を繰り返すというのは作曲の理想であり、時が経って勝手に熟成し、勝手に時代が曲に追いついてきて何度もヒットする。尾崎の死後に生まれた若者たちが金を払って曲を買い、カラオケで唄っている。価値が高い。時代や雰囲気に左右されない名曲になりつつあるが、反抗期ソングではなく、ラブソングたちが名曲になるとは30年前の1985年には誰も気づかなかった。(山田)

 

 

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