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カウンター席で

 

銀座の鮨屋ではありえないが、町の小さな鮨屋へ入るとカウンターのはじっこに荷物が置いてある。カウンターの一番はじの席に座る習慣の私は右から二番目の席、ホコリのかぶった荷物の隣で飲むことになる。

飲食店には必ずゴキブリがやってくる。食べ物を扱う量が多いからやってくる。毎年ゴキブリ団子をたくさん設置しておけばゴキブリは出て行ってくれる。

ゴキブリ団子をカウンターの上に置く人もいるが気分のいいものではない。あれは人目につかない暗いところに置いても効き目がある。

ゴキブリ団子の効き目は1年と決まっているのに、まだ効き目が残っていそうでそのまま変えない店が多く、いつまでも効き目のない団子を置いておく。飲食店は暖房が効いていて、冬でもゴキブリが出るから変え時を忘れることもあるから、年に一度夏前に全部捨ててから新しいのを設置すると決めないとダメだ。忘れず置きかえればゴキブリが住み着くということはない。株式会社タニサケのゴキブリキャップは少し値段が高いが抜群の効き目を発揮する。私の住まいは古くて汚いがゴキブリキャップを置いてからここ10年以上、ゴキブリが住み着くようなことは一度もない。

カウンターにものを置いてはいけない。

ビールを飲み、冷酒を飲んで気分が落ち着いた頃、カウンターに置かれた荷物から茶ばねゴキブリが様子をうかがいながら顔を出す。カウンター席に荷物を置いている店はどこの店でも必ず出でくる。驚いて心臓をおさえ、以降、酒も刺身もまずくなる。飲食店には物が少ない方がいい。ゴキブリが隠れるところを少なくする。カウンターに荷物を置くということは客のすぐそばにゴキブリの住処をつくっているということであり、そういう店はいたるところに物があり、ゴキブリの隠れ場所になっている。

店の人に気をつかい、そっとゴキブリを追いやると2分かくれているが、繰り返しているうちにだんだん大胆になってきて、皿の上にまでのぼってくる。店主の顔より、ゴキブリの顔が強く記憶に残り、その店にまた行きたいとは思わない。

暗い店にもゴキブリは多い。黒い壁にもよくみると普通にいる。目立たないところ、物が多いところにゴキブリは潜む。古くなった店にゴキブリがいるのは当たり前でいたるところに卵を産んでいるから対処しなければいくらでも出てくる。荷物を最小限にする、明るくする。

そば屋のカウンターで飲んでいたら、植木鉢がカウンターのはじに置かれていて、その土にゴキブリが住み着いていた。土に住み込んだゴキブリは茶ばねではなく4センチ超の大きなもので、私はカレーそばを食べ終わることなく逃げ出た。きっとあの植木の裏に卵を産んでいる。植物を飾りたいのなら植木ではなく、手入れが流動的な花瓶までにしてほしい。

60歳を過ぎると頑固になる。歴史あるバーで飲んでいたら大きなゴキブリが酒瓶の間から出てきた。

いつものことなのだろう。他の客にばれないようにそっとマスターにゴキブリを指さし、「虫、虫、ゴキブリ」と小声でおしえてあげると、マスターは後ろを振り向くことなく「いません!」という。ゴキブリなんていては困るという強い信念がゴキブリなんているわけはないとマスターを信じさせている。歳をとると大量の酒瓶をいちいち掃除するのが面倒くさくなり、いつまでも掃除できないでいる。そんな年老いた自分を認めることができないでいる。

「隣の店から入ってくる」と嫌な顔をして人のせいにする人も多い。みんなどこかおかしい。

消毒液を散布する60歳以上の経営者も多い。店中が消毒のにおいで頭がクラクラする。こんなにおいの中では酒なんて飲めないし、何を食べてもまずい。消毒液を散布するのは末期症状といえ、必ず近いうちに店がつぶれる。消毒液を散布するレベルにまでおかしくなってしまったといえる。認知症のはじまりともいえ、さすがに客もここまでくるとついていけない。

ゴキブリが出てきて怒る客はいない。二度と行かないだけで、店の人には文句をいわず、他所で陰口をいうから噂が広まり、客が減る。常連客も気にしないふりをするが、そのうち気持ち悪くて我慢できなくなり、まともな客はこなくなる。気づけば大きいゴキブリをみながら飲み食いできる人たちが集まる店になっている。たまにではない、毎回出てくるようになる。ゴキブリがたくさんいてもかまわない客はゴキブリに似た人たちで、店がくさくても汚くてもおししくなくても、栄養が摂れればそれでかまわない。そんな店はいい店ではない。

魚を飼う水槽も置かないでほしい。水槽の横に置いてある魚のエサのにおいが強くて酒がまずくなる。

インコを放し飼いにしている居酒屋に入ってしまった。カウンターにフンをして、年老いたマスターがインコに話しかけながらティッシュで拭いて回る。フンと鳥のエサのにおいが漂っていて、当然客は私一人だった。

猫が尻をこちらに向けて寝ているカウンターもあった。猫も鳥も金魚も、飼い主が思っているほどは客にとっては可愛くない。

カウンター席を荷物置き場にする店主は老人が多い。どの家にだって食材を狙ってゴキブリがやってくる。飲食店にやってくるのは当然だからゴキブリ団子を置く。老人は情報量が少ない。新しい世の中に適応できないからゴキブリ団子を知らないし、新しいものを受け入れるのが面倒くさい。カウンターに荷物を置くようになった時、世の中とのずれがはじまっている。(山田)

 

 

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