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課題・らっきょう

 

らっきょうの季節を毎年楽しみにしている。

6月、泥らっきょうがスーパーの野菜コーナーに並ぶと1袋買う。

まずはタレをつくる。鍋に醤油1本、黒砂糖のかたまり、鷹の爪数本、しょうがをすりおろしていれ、弱火でゆっくりあたため黒砂糖を溶かしながら沸騰させる。沸騰したらすぐに火を消し、そのままさます。さましたらジョウゴで醤油の入っていたペットボトルに戻す。このタレはいつまでも日持ちするからあらかじめつくっておく。各分量は自分の好みでいい。しょっぱいのが好きなら黒砂糖を少なめにし、甘めがいいなら黒砂糖を多めにする。どちらにしろ飛び切りにうまくなるから毎回味を調整して進化させていけばいい。私はもう20回はらっきょうを漬けているが、いまだ研究過程にあり、死ぬまで進化し続ける。研究過程であっても毎回飛び切りうまい。

夕方、泥らっきょうの根を包丁で1粒づつ切り落とし、1粒づつ丁寧に水洗いする。タオルでらっきょうを拭いてやり、乾いたタオルに寝かせ、朝まで表面を乾かす。クーラーのそばに置いておくとさらりと乾く。

らっきょうたちへの愛が深まる。らっきょうはうまさを裏切らない。今年は1袋全部で117粒あり、117粒全部うまくなる。丁寧に扱って損はない。多少、雑に扱っても裏切られたことが1度もない。必ずうまい。うまさが長持ちしないから自分で漬けるしかない。外で食べられることはまずない。

70年ぐらい前の料理本が家にあり、数々の料理法が書いてあった。その中の泥らっきょうがうまそうで、その本の通りに漬けたら感動した。その本はもう捨ててしまったが、何回も漬けているので調理法が頭の中で進化しながら身についている。

朝、らっきょうの表面の皮が乾いてめくれてカサカサいっている。この状態になったらっきょうが汁を吸うのは早い。

完全に乾いているビンにらっきょうを詰め、上からタレを注ぐ。タレは少量でいい。20センチの高さの瓶なら、下3センチ程度溜まる程度でいい。ビンをぐるぐる回転させてタレをらっきょうにからませていく。気持ちが高まる。早くもうまそうだ。甘辛くていいにおいがする。

冷蔵庫に入れる必要はない。冷蔵庫に入れてはいけない。冷たいとうまくない。常温がおいしい。

浅漬けと同じだからビニール袋でもできるだろうが試したことはない。ビンを転がすのが楽しい。らっきょうがポトポト音を立ててタレにからまっていくのをうっとりとみつめる。

全体にタレがいきわたると数分でまんぱんだったビンの上部に隙間ができる。

らっきょうはぐんぐんタレを吸う。いつ味見してみても大丈夫だが、5時間過ぎた頃からうまくなってくる。根本と頭からタレを吸い、上から下からタレがらっきょうにしみ込み出したのがよくわかり、食べ頃がはじまる。もちろん、タレに漬かっている一番下がすぐに漬かるから、瓶は大きめの方がいい。上下にもらっきょうが転がるとまんべんなくタレがからまる。口の大きいビンなら手を入れ、おいしそうならっきょうを味見しやすい。

食べ頃を見極めるのが難しい。まだかな、というところから今だ、というところまで、ずっとおいしくてたまらず止まらない。

人それぞれうまさの見極めが違う。

味見段階で食べ終わってしまうことも多い。味見段階なのか食べ頃なのか何回漬けてもわからない。それほどうまい。最初は1キロ食べてしまう。おいしいのだからおいしいと思っているうちに食べたいだけ早く食べてしまえばいい。甘くてしょっぱくて、不自然でない気持ちのいい自然の辛さで歯ごたえがとてもいいから止まらない。ボリボリという豪快な歯ごたえが頭に響き、この爽快な歯ごたえはこのらっきょうでしか味わえない。らっきょうの甘みがタレと本当によく合う。

しょっぱさが冷えたビールに合う。ごはんにも合う。らっきょうをごはんの上にのせると醤油がいい具合にごはんにしみこむ。

あまりのうまさにビンを買い足してはいけない。1日で食べ切れる量を漬ける。1ビンづつ後悔ないように大切に付き合う。おいしく食べるにはそれしかない。1キロまでなら1人でもおいしいまますぐに食べ終わってしまう。

いくらおいしくてもいつかは飽きる。1ビン食べ終わってからもう1ビン漬ける。だいたい1シーズン2回でいい。

数日で発酵がはじまりすぐにすっぱくなりおいしくなくなる。汁を吸い過ぎてもしょっぱ過ぎておいしくない。腐ることはないのだが、完全に汁を吸うと真っ黒になり小さくなりまずい。あんなにおいしかったのに食べられたものではない。何度も手を入れて味見しているとかびる。時間が経てば経つほどしょっぱくてすっぱくて捨ててしまう。

らっきょうを何時間も放っておくことはできない。タレを入れたら頻繁にビンを転がす。早く食べたい。何時間もらっきょうにつきっきりなのですることのない日の朝に漬ける。友達に食べさせたくなるが時間との闘いなので人にあげるのは難しい。あげた人が食べる頃にはベストの状態ではないことがよくありがっかりする。においが強いから相手の都合もあり、いきなり食えとはいえない。らっきょうはタイミングがとても難しい。

手がかかるだけの価値は確実にある。(山田)

 

 

 

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