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町の肉屋のメンチカツ

 

思春期の頃に通った町のメシ屋はどこもなくなってしまった。今考えても駅前にあった小さな中華料理屋はこの世で一番うまかった。1000食以上は食べたから、今でもそれぞれ味をよく覚えていて、あれに似た味はどこにもない。味噌の効いた肉野菜炒め、中華鍋でつくるから巨大化した三段のかつ丼、みためは動物のエサでトロみのない中華丼、トロトロで甘酢とは無縁のあの店でしか食べられない天津丼、酔っ払いが大喜びで注文する特盛チャーハン、小麦粉を強火で炒めてつくる具が肉と玉ねぎとセロリだけのカレーライス、どれも最強の名にふさわしかった。20年前になくなった店なのに、ネットで検索するといまだに熱い思いを語っている人が多いので、やはりあれは本当に地球で一番うまい中華料理屋だったかもしれない。

町の肉屋ももうすぐなくなる。魚屋も八百屋もなくなっていく。大型スーパーにかなわない。儲からないから後継ぎもいない。今のおじさんとおばさんが働けなくなったらどこも店を閉める。

町の肉屋にはうまいメンチカツがある。儲けを考えずに、昔から同じつくり方をしている。今風に合わせることなんてない。歳をとって今さらそんなことはできないし、する気もない。だからあいかわらずうまい。

レストランのうまい自家製メンチカツとは違う。デパートのうまい今風メンチカツとも違う。昔から慣れ親しんだ町の肉屋のメンチカツが一番うまい。

私の町の肉屋のメンチカツは肉がつまっている。10分前に頼めば揚げたてを買えるが、家に帰る間に冷えてしまう。

ここの肉のつまった固めのメンチカツにはとんかつソースよりもカレーよりもハヤシライスが合う。

外でカツカレーを食べていると、「もっと熱いのが食いたい」「揚げたてのカリカリしているのが食べたい」「ルーをケチちらずにドップリとかけたい」と思う。納得するには自分でつくるしかない。

町の肉屋に行ってメンチカツを二枚買った。100円ショップでカレー皿を買い、スーパーで油とレトルトハヤシライスを二つ買った。

手抜きをしない。レトルトハヤシライスはきちんと熱湯で十分過ぎるほどにあたためる。じっくりあたためると食べる時に湯気が勢いよく立ち上って気持ちがいい。

米が炊けるのに合わせてメンチカツをもう一度揚げなおす。衣がカリカリになって、さらにハヤシライスに合う。

米が炊けた。包丁でザクザクとメンチカツを三つに切り、ごはんにのせる。ハヤシソースをかけたいだけかける。ごはん、メンチ、ルー、どれも口がやけどするほどに熱くなっている。全てがそろった、こんなにうまいものはない。(山田)

 

 

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