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神保町の昼メシ

 

長く神保町に勤めたので、長く続く店はだいたい行った。

神保町はうまいものだらけで、昼メシがうまい。神保町に勤め始めた若者や神保町の学校に通い始めた学生は、まずはてんぷらのいもやととんかつのいもやに感動する。とんかつのいもやのサービスの漬物は甘くてかなりうまい。熱くてかために炊いたごはんに合う。てんぷらのいもや1丁目店の味噌汁はうまい。神保町にいる人は誰でも平均20回以上いもやに行ったことがある。それから誰でもカレー巡りをし、共栄堂、まんてん、キッチン南海、ボンディあたりは全員一度は行く。どこも数百円で安い。安くてうまい。

神保町デビューをした人は昼にうまいものばかり食べ、店が無数にあり、次から次に新しい、あらゆるジャンルの店が誕生するから飽きずに行き尽くすということがない。

不思議と、夜は行きたい店が少ないから、神保町の編集者は昼は神保町の会社の近所で、夜は他の街に電車に乗って打ち合わせに行く。

神保町から離れて長く経つと夜もやっぱりうまい。ランチョンのエスカルゴ、ビーフパイ、エビフライ、チキン唐揚げ、エビクリームコロッケ、セルジュのミックスピザ、寿司政の甘くない鮨、そばよりてんぷらの人気が高い松翁、生きたエビの揚げたてを急いでもってきてくれ口の中がやけどする。神保町に行きたい。

昼、私はうなぎの今荘が好きだった。

数か月に一度、うなぎの今荘に行きたくなり、行くと決めたら朝から体調を整えて、満席になり列ができる前に、いつも開店時間の11時半に今荘に行った。12時になると満席で入れず、すぐに食べられない。

メニューはうな重のみで、大盛を頼む。ごはんの量が違うだけで値段は大盛と並で変わらなかった。並は炊き立てごはんの上に、チョボリチョボリとおいしいタレをかけ、焼きあがったうなぎをのせてふたをする。大盛りは箱から飛び出すほどにそびえた山盛りごはんにジャボリジャボリとおいしいタレがたっぷりかけられ、ごはんの頂上にふんわりと焼きあげられたホヨホヨのやわらかい鰻をのせ、おばさんが重箱の蓋で山盛りごはんをグッとプレスする。

配られた重箱を開けた瞬間、朝から何も口にしないでよかった、と実感する。山椒を多目にふり掛け、上顎の皮がはがれるほどに熱い肝吸いをすすりながらかために炊いたごはんをかみしめていく。何口食べてもうまさが続く。ごはんののど越しがいい。最後にうなぎをいっぺんに頬張り脂っ濃さを味わう。箱の隅の最後の一粒まで楽しくいただける。ごはんもうなぎも肝吸いも全部熱々で、食べ終わるとうっすら汗をかいている。

今荘の話をすると、聞いた人が翌日今荘で大盛を食う。私も何度も飲み友達と今荘で遭遇した。口コミでうまさが広がっていく。

3000円は全然高くない。他のうなぎ屋とは満足感が違う。前の晩に話を聞き、翌日朝から腹をすかせ、熱くておいしいうな重で腹一杯にする。これ以上の喜びはない。(山田)

 

 

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