Entry: main  << >>
ケチらないからぼらないでくれ

 

若いカップルが焼き鳥屋にやってきて、5本セットとウーロン茶とウーロンハイを頼んだ。彼らはいつもこれだけ頼んで1時間いて、テレビをみて帰っていく。日本シリーズやワールドカップやオリンピックになると試合終了まで1時間以上いる。テレビの見やすい4人掛けのテーブルに横に並んで座る。お会計はいつも1780円で本当に迷惑だ。店のおじさんもあまりこの若い夫婦と話さないし、目を合わせようともしないから迷惑しているに決まっている。そんな売り上げでテーブル席でうまいものを食いながら時間をつぶされては店がつぶれる。

やはりレベルというものは存在する。銀座あたりにこういう客はいない。銀座あたりには余裕のある客が多く「ケチらないからうまいものを食わせてくれ」「優雅な時間を過ごすためには少し高くても仕方がない」という考え方をする人がいる。銀座に出掛けるためにきれいな服に着替える人もいるのだからモチベーションが高く、盛り上がる。お互い気分がいい。

私の住む埼玉県の客と銀座の客の中間が新宿あたりで、新宿にはいい客も汚い客もいる。

地元のバーで飲んでいたら、気持ちの悪い若者が隣に座ってきて、「中上健次をどう思いますか?」と聞いてきた。店の人に私が編集者だったと聞いたらしい。

彼はコーヒーを飲んでいた。コーヒーは400円で、他のところで飲んできたからもう酒は飲めないのだという。バーで400円のコーヒーで2時間もいたら店は迷惑する。中上健次のことを考えるより、まず、店への迷惑を考えてほしい。話を聞いていると彼は『枯木灘』と『軽蔑』だけを読み、ぶ厚い『軽蔑』を読み終えて興奮していた。

新宿のバーで語れば、中上健次の知り合いにもたくさん出会えるのに、なぜ埼玉県の普通のスナックで400円のコーヒーで相手かまわず中上健次を語るのか。私は『枯木灘』は読んだが、内容も覚えておらず、彼との時間は無駄で不愉快だった。

(ケチらないからぼらないでくれ)と切望することが多い。どこの店でも酒をすすめるとたくさん飲まれて嫌になる。こちらの本心は1杯でやめてほしい。すすめなければいいのだが、そうはいかない。遊びの先輩たちに何度もいい思いをさせてもらったから、かっこよかった彼らの飲み方を真似ないわけにはいかない。

2000円で飲める店で7000円払わされる私のような客をカモだと考える店の未来はない。実は私も常に金の計算をしていて、3杯以上飲まれたらその店にはもう行かない。

商売なのだから「ケチらないからぼらないでくれ」と「ぼらないからケチらないでくれ」の探り合いでいい関係ができる。そんな関係でないとこれからの飲み屋はやっていけるはずがない。(山田)

 

 

| chat-miaou | 01:01 |
スポンサーサイト
| スポンサードリンク | 01:01 |