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貧乏人と金持ち

 

金持ちは残高が減るのを極度に嫌う。今の資産を維持すれば、今と同じ生活が維持できる。

自力で金持ちになった人などほとんど存在しない。金持ちは生まれた家で決まり、それは土地を意味する。

普通のサラリーマンの年収は400万円以下だが、これは月収25万円×12=300万円と、夏と冬にボーナスが50万円づつ出る。25万円の月収から色々引かれて手取りは19万円で、都内の家賃10万円のマンションに住めば残りはもう9万円しかない。ボーナスをひたすら楽しみにする人生となる。何千万円もする土地なんて恐ろしくて買えない。一人が楽しむのがやっとで、女房を養うためには趣味にお金をかけることなんてできない。子供をもつとさらにつらい。親が金持ちなら援助してもらえる。親もかわいい孫のためなら援助してくれる。

年収300万円の会社は給料を出すのがやっとでボーナスは出ない。

年収500万円ぐらいから希望が出る。月収は25万円だが、ボーナスが夏と冬100万円づつ出て、ボーナスで女房と子供は普通の生活ができるようになる。

年収300万円、400万円、500万円で生活は多く違うが、親が金持ちだともっともっと違う。つかわない土地は駐車場かアパートかマンションなので、家賃収入が月収何百万円も入ってくる。実際は入居者が入らないから大変だ、とみな口を揃えていうが、本当にマイナスになる土地ならばとっくに不動産屋に売り渡している。過剰投資をして返済計画が狂い大損する金持ちは多いが、普通に元からある土地を人に貸していれば入ってくるだけで、破産なんてしない。

派遣社員の年収は250万円に届かずボーナスもない。私の周りの出版系の人たちは年収200万円いかない。出版社回りをしてたまに頼まれる仕事は1回2万円ぐらいの仕事で、月にいくつもない。

都内に住むとワンルームの小さいアパートで6万円以上する。探せばもっと安いアパートはいくらでもあるが、6万円以下では隣の話声で眠れない。ユニットバスも快適ではない。5万円以下になると古い畳部屋でかゆい。押し入れに30年以上前の新聞紙が敷かれている。隣が夢を追いかけていて夜中にギターを弾いて唄い出す若者だったり、外人がパーティーを始めて強い香辛料の臭いが漂ってきたり、一日中家にいるおじいさんが猫と話し合ったり、歌を唄って眠れない。

みんなできるだけきれいなところに住みたいが、親が金持ちでない普通のサラリーマンや派遣社員が一軒家を買うことはかなり難しい。全てを一軒家に注ぎ込むような暮らしをしなければならない。

貧乏人はお金が入ると喜ぶ。普段からお金があったらあれもしたい、これもしたい、とそればかり考えているからボーナスが入ると買い物に行く。金がなければないほど、投資をする金はないからギャンブルをする。

パチンコや競馬や競輪でたまに10万円勝つと仲間を呼んで酒を飲む。残高が減るのを嫌う金持ちがやってくる。

豪邸に住む金持ちは残高が減るのを嫌うので、いかにしてただで酒を飲むかばかり考えている。

アパート暮らしの貧乏人が家賃収入もある豪邸暮らしの金持ちに酒を奢る。

普段いばることのできない貧乏人が興奮して大きなことを言い、ストレスが発散される。普段より声がでかくなり、声が通って気持ちよくてたまらない。金持ちも金が減らないから楽しく聞いてくれる。

キャバクラで10万円つかいきり、貧乏人と金持ちは別れて帰路につく。腹が減ったので貧乏人は残った380円でコロッケそばを食べながら楽しかった一日を思い返す。まだ興奮が残っている。またギャンブルで絶対勝とう、とかたく決意する。

帰り道で腹が減った金持ちは財布の内側から小さくたたんだ1万円札を取り出し、奥さんを呼び出し、中華料理屋で五目そばにカニチャーハン、春巻き、餃子を食べながら紹興酒を飲みなおす。(山田)

 

 

| chat-miaou | 01:01 |
金持ちの気持ち 3

 

人口が減りはじめ、周囲に空き家が目立ってきた。5分自転車で走れば数軒は空き家がみつかる。

老人が住んでいた古い家は買い手がみつからないまま不動産業者に引き取られ壊され、再開発となる。

15年も経っていない家もパワーショベルで壊されていくのが目立つ。高齢の親の将来の相続税対策にすごい豪邸が続々と登場している。住居なら相続税対象評価額が8割減らされるから、みな思いっきり自宅に金を注ぎ込んでいる。興味深く完成した豪邸の前を通りかかり、住んでいる人の顔をのぞいてみると、やはり老人、若夫婦、子供の三世代が住んでいて、明らかに相続税対策だとわかる。広い駐車場に高級車が並ぶ。門にも塀にも床にも植物にも芝生にも庭用水道にも置物にも表札にまで無理矢理というほど金をかけている。その家が近づいてくると、かなり遠くからでも目立つから噂になる。印象が強過ぎて世間話に出さないわけにはいかない。人間の考えていることはみな同じで、当然、近所の人も親戚も友達も営業マンも泥棒も詐欺師も、いったいあといくらあるのだろう、と考える。あり金はたいて豪邸に建てかえる人はいないだろう。法律で決められた住居敷地面積で、建物だけではどうつかっても1億はかからないだろう。あんなすごい家に住んでいたら強盗が恐くてセコムなしでは安心して寝られない。

よくいくスナックに自称パチプロのおじいさんがいて、勝金が1万円以下なら煙草に変える。そのおじいさんは煙草を吸わない。スナックの常連客たちの吸う煙草の銘柄をそれぞれ覚えていて、無言で数箱づつ配っている。アルバイトの女の子にはお菓子やジュースを取ってきてくれる。毎晩のことなので、みんな普通に「ありがとう」といって受け取っていくが、今、煙草はかなり高額な嗜好品になっているのだから、もらった方はかなりありがたいはずだ。おじいさんにとってのボランティア活動なのだろう。一人でする、誰にも何も指図されないボランティア活動は楽しい。

おじいさんの着ているものをみて、お金持ちだとわかる。毎日1万円つかって夜5時までパチンコを打ってから2000円で飲めるこのスナックにやってくる。私にも何かくれようとしたことがあるが、私は煙草を吸わないし人前でお菓子を食べない。

おじいさんのお金のつかい方はみていて気持ちがいい。欲しい物をくれるから人気者になる。横からそっと財布の中身をのぞいてみると1万円札と5千円札はなく、千円札が10枚づつ束ねられていた。小銭をたくさんつかい、小銭のつかい方がうまい。みていて気持ちがいいということは、それが正しい金のつかい方なのかもしれない。(山田)

 

| chat-miaou | 01:01 |
金持ちの気持ち 2


 

金持ちが嫌いなのではない。金持ちはかっこよくて羨ましい。金持ちなのにケチなのが嫌だ。大きな家に住み、いい車に乗り、割り勘分の飲み代を払わない。そういう金持ちが多過ぎる。そういう一緒にいるのが恥ずかしくなるようなのが金持ちの特徴になってしまっている。そういう金持ちはとても目立ち、確実にみんなから陰口をいわれている。

スナックの女の子を何度か飲みに連れて行った。

この子が調子に乗り、私の行きつけの店に友達を連れて飲みに行き、私のボトルを空にし、さらに飲み代を私のツケにして、ボトルに「ごちそうさまでした」と書き残した。

とてもきれいな子だと思っていたが、一気にさめ、気持ちの悪い汚い女にみえ、それ以来、顔もみたくないから彼女のいる店には行かない。人気があって、性格がいいといわれているが、まるで豚のようだ。

なんでああいうことをするのだろう。金持ちでお父さんがマンション経営をしていて、本人も都内の広いマンションに住んでいる。飲み代もタクシー代もいつも誰かに払わせるが、彼女は私の10倍以上金を持っている。金のないふりをして金を持ち歩かず、人の金で飲み歩き、自分の金は自分のためだけにつかう。そんなことをして得をしていると本能的に感じている。親も兄弟も親戚もみんなそういう人たちだからそうなったのだろう。

「今日は私のことを好きなおじさんのボトルを空にして、友達の分もおじさんのツケにして飲んできちゃった」「で、いくら分儲かった?」

家族でこんな会話をしていないにしても、頭の中では計算している。

流行のきれいな服がよく似合っていたが、人の金で買った卑しいかっこうにみえる。交通事故にあってできるだけ長く苦しんでから死んで欲しい。

嫌々彼女の支払いを済ませると、マスターが、「やさし過ぎるんじゃない?」といった。こいつも駄目だ、こんなことに、やさしいなんていわない。3流だ。さすがに頭にきて、もうこの店にも二度とこないから「あなたがツケをみとめるからこうなったんだろ、誰がツケていいなんていったんだよ」と捨て台詞を残した。彼女が私の確認をとった、とウソをいったというが、相手が私でなければそんなウソが通用する店でもないだろう。こんな奴と話しても無駄だ。こいつも私が払わなければ騒ぎ出す。とっとと縁を切り、二度と顔をみたくない。思い出すのも嫌だ。

美しいとは難しい。この女は美しくなんかない。近いうちに誰からも相手にされなくなり、クソババアと呼ばれる。一度だけ、私にだけこんなことをしてしまったなんてことはない。思考回路も行動も、いかにして金を出さないで済むか考え、それが芯から身にしみつき、それが他者からみてどれほど無様か死ぬまでずっと気付かない。

そろそろ勘定になると寝たふりをする、トイレに行ってなかなか戻ってこない。そんな生きる姿勢でいては大きなバチが当たる。みんなから恨まれる人は必ずそうなるようになっている。

性格がいいママがやっているスナックがあって、その子を連れて行ったことがある。後日、私がその子について語っていると、

「どこがいい子なんだよ、いい子なわけないじゃんかよ、そんなの少し考えればわかるじゃんかよ、まったく男はしょーがねーなー」とあきれた。

周囲の人間の、ありもしない長所をでっちあげ、聞くに堪えない低レベルな物語をこしらえる。なるほど、いわれてみれば顔がきれいで、若くてスタイルがいい以外には、いい所は一つもみつからない。(山田)
 

| chat-miaou | 01:01 |
金持ちの気持ち 1

 
 

安い居酒屋で飲んでいるのはほとんど低所得者だが、何%かお金持ちがいる。

私はいつも一人なので、テレビをみているふりをしながら周りの人たちの話を聞いている。一人2000円で十分飲める居酒屋で億単位の話をする人がけっこういる。
話を聞いていると、お金持ちには共通点がある。親から受け継いだ土地の所有者で、駐車場、アパート、マンション経営の話をする。本業の他に資産運用をしており、副収入の方が莫大となっている。会社の給料は25万円なのに、家賃収入が数百万円ある。利益がある程度貯まると銀行と相談し、税金対策を練りながらまた新しいマンションやアパートや駐車場を建設する。

生まれた時から金持ちなので、成金のように無駄遣いはしない。高い店で飲んだり、銀座で飲むような愚かな真似はしない。金はつかえば減る、つかわなければさらに貯まる、という基本フォームがきっちりと身についている。ケチは一緒にいると不愉快ではあるが、悪くはない。誰に言われた訳ではなく、育った環境でそのようになる。生まれてきてまだ頭の中が真っ白な赤ちゃんが、無意識のまま周囲から生きる基本フォームを吸収して人格ができあがったのだから一生抜けない。親や親戚と同じように、雰囲気や空気から自然に金持ちの気持ちが身につく。貧乏人は入ってくるお金に狂喜し、すぐにつかって元々の貧乏に戻り、お金持ちは資産を決して減らさない。お金に対する感受性が強いため損得勘定にすぐれ、ギャンブルにはまるようなことはない。たとえ100円でも、負けた時の痛みは常人の想像を絶する。デート代が5000円かかったら全額おごるようなことはせず、「1000円でいいよ」と、少しでもダメージを減らす。

ケチでもいい。金をつかい切ってしまえばまた稼がねばならないし、節約すれば金が減らない。ペットボトルは買わずに水道水を飲んだり、かけそばや牛丼ばかり食べたり、100円ショップで済ませられるものは済ませてしまったり、その人の自由で、誰にも迷惑をかけていない。みんなが嫌がり陰口をいい、みんなに嫌われ、本当に迷惑なのは、自分の分を払いたがらない、自分の分を人に払わせようとする、人に迷惑をかけるケチだ。これは自分だけの主義ではなく、みている人を本当に嫌な気持ちにさせる。人に奢ってもらうことばかり考えている。飲み会に行けば自分の分を払うに決まっているのに払わない。資産は1億円を超えているが、飲み会の割り勘代2500円をどうしても払いたくない。会計になるとトイレに行ったり、寝たふりをしてとりあえず支払いを誰かに代わりに払わせてそのまま「面倒くさいからいいや」といってもらう。この「面倒くさいからいいや」といって奢ってくれる酔っ払いはどこにでもいて、ケチな金持ちはこういう人を探している。話が合うとか趣味が合うとかその人の性格やセンスが好きだからではなく奢ってくれるから目をつけ付き合う。最小限の金しか財布に入れず、次の店の割り勘代はもうないのに二軒目に一緒にくきて、カモに払わせる。無銭飲食や事件になることも、怒られるようなこともないことを経験的に知っていて、何度も繰り返してもう癖になっている。カモとしか付き合えなくなっていて、飲み代は奢りだと決めて飲みにきている。それが自分の才能だとまで思っている。代わりに払わされた人は翌日にきちんと請求しないと目をつけられ、次回からもつきまとわれる。たてかえた分を請求してもなかなか払わないからこちらも嫌な思いで面倒くさくなって請求するのをやめる。すぐに離れるしかない。一度目をつけられたら解決策はただ一つのみで、そいつがいるところには決して二度と近づかない。相手は常に代わりに払ってくれる人を品定めしている。

誰がも陰口をいうから知らない人にまでイメージが悪くなり、人相も悪くみえ、最初から泥棒のような目でみられ、たかが割り勘分を払わないだけで本人も大損していいことは一つもないのに、本人だけは得した気分でいるので、さらにまた嫌われ、負のスパイラルは止まることがない。本当に頭にくる。顔を思い出すだけでも気分が悪くなる。
金持ちの仕事はできるだけストレスの少ないものを選び、残業がないため早い時間から飲んでいる。

もっといい店の方がおいしいけれど、少しでも安い店に行ってダメージを減らす。生涯でつかう総額は平均よりずっと少ない。

いつも「金がない」と言っている。時計はロレックスで人前でははずさない。

そんなに貯めてどうするのか。安心を買っている。多ければ多いほど、死ぬまで不安なく暮らすことができる。

ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の金持ちのお父さんもお金を誰にもやらない。

「できるだけ長生きする。だから1円でも多く必要なんだ。年をとるにつれて汚らしくなるから女がよってこない。そこで金が必要になる。自分が楽しむだけのために少しでも多く貯めておく。みんな口には出さないけれど考えていることは一緒さ」
お金持ちは家にはお金をかける。将来子供に相続をする時、住居は
80%資産控除され、相続税対策となるため惜しみなくつかえる。2000円で飲んでいるのに、控除範囲内の敷地面積で、できるだけ広い、できるだけりっぱな家に住んでいる。本当は金を持っているかいないか、住んでいるところと車をみればすぐわかる。快適のために金をかけないでいられる人なんていない。だから家と車に高い税金をかける仕組
みになった。

一緒に飲んでいる貧乏な同僚が仲間の正体を知って呆然としているが、決しておごってもらえない。(山田)
 

| chat-miaou | 01:01 |
ケチな男 2

 

彼女は314日生まれだった。普通の人は誕生日とクリスマスとホワイトデーと3回プレゼントをもらえるのに自分は2回しかもらえないと文句をいい、私にホワイトデーにはプレゼントを2つくれと要求した。

出会った頃はバレンタインデーに手作りのチョコをつくってきてくれたりしたが、ホワイトデーのお返しに無理矢理プレゼントを2つ買わされるのが嫌だった。彼女はブランドものの服やバッグや指輪が好きで、ホワイトデーはいつもデート代が5万円以上かかった。

付き合いが長くなってくると二人の関係に緊張感がなくなった。ある年のバレンタインデーはさっきその辺のコンビニで買ってきた普通の100円の板チョコを手渡され、私は別にそれでそれほど傷つかなかったが、ホワイトデーのお返しもコンビニのクッキーというわけにはいかず、高級品を無理矢理2つ買わされるのが納得いかなかった。

彼女は若く美しく、ブランドの服もバッグも指輪もネックレスもよく似合った。水着を買わされるのだけは、私も興奮しながら選んで楽しかった。

彼女が私に服や靴をプレゼントすることもあったが、着心地のいいようなものやセンスのいいものではなく迷惑だった。バレンタインデーにもらったジャンパーはデザインも着心地も悪く、彼女に気をつかってデートの日に着ていった。彼女との待ち合わせに向かって歩いていて、ポケットに手を入れると値札が出てきて、1000円だった。

安い服でもいいものはいい。安い服をプレゼントし合う仲ならいい家庭が築けるかもしれない。私と彼女にはいつも格差があった。生まれも育ちも大差があった。

彼女は高いものを欲しがり、私用には絶対に100パーセント安いものを選んだ。普通に歩いているだけで足を捻挫しそうな安定感のない、履き心地の不快な、グニャグニャしたビニールの安そうな変な、聞いたことのない怪しげなメーカーのブーツを履いて彼女と歩いていると、ボンドが剥がれて一度に靴底全てが剥がれ落ち、やり切れない気持ちになった。私はそういうボロを身につけているのが嫌で仕方がなかった。そういうことが度々あり、彼女への不信は募り、決して結婚したいとは思わなかった。(山田)

 

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ケチな男 1

 

若い頃は普通に恋人がいた。

彼女は美人だったがケチだった。デート代は電車賃以外は絶対に出さないと決めていて、喉が渇いてお茶を飲みたくなると自動販売機の前で私に向かって100円ちょーだい、と手を出した。恋人だし、近いうちに結婚するつもりだから男が女を食わせていくのが当たり前という考えの人だった。熱く誓い合った訳でもないし、実際に結婚するかどうかなんてわからず、私はそんな考えが大嫌いだったが、彼女は美人なので別れることなんてできないでいた。

彼女の友達とその恋人と4人で旅行に行った。

昼メシを食べると、あっちのカップルの彼が昼メシ代をまとめて払ってくれ、私は嫌な予感がした。

その予感はいつものように的中した。夜には、4人で焼肉屋に行って生ビールを飲んだ。

私は焼肉を食べながら最初からずっと勘定のことが気になって、私は焼肉は好きではないからあまり食べず、後のことを考えて生ビールも節約するようにして飲んでいた。

勘定になると、やっぱり私の彼女が「お昼ご馳走になったからここはうちらが払うよ」と余計なことを言った。「うちら」などと宣言してしまっておきながらも、彼女は電車賃以外は払わないと決めているのだから私一人が払うことになる。言いたくはないが、昼のランチは酒も飲まず、一人1000円のプレートで、焼肉は2万円近い。なぜ私が初めて会う見ず知らずの恋人たちに、自分の意志に反して焼肉をおごらなければならないのか。

相手の二人はもちろん断ったし、私におごってもらおうなどという気持ちは全然もっていない善人たちであった。ランチをおごってくれたのも友好の証であり、見返りなど求めていなかった。私は4人の中で一番年上だったし、彼女の余計な一言で後に引けなくなり、2万円を支払い、その悲しみは態度で相手のカップルに伝わっていた。彼女の余計な一言から先は、納得がいかず、どうしても笑顔をつくることができないでいた。

旅行から帰り、3人と別れ、私はすぐに長沢に電話をしてヤケ酒を飲んだ。長沢と気が合った。自分の恋人とは気が合わなかった。長沢はケチでなく、私と彼女はケチだった。それが彼女と結婚しなかった大きな理由だった。(山田)

 

| chat-miaou | 01:01 |