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課題・らっきょう

 

らっきょうの季節を毎年楽しみにしている。

6月、泥らっきょうがスーパーの野菜コーナーに並ぶと1袋買う。

まずはタレをつくる。鍋に醤油1本、黒砂糖のかたまり、鷹の爪数本、しょうがをすりおろしていれ、弱火でゆっくりあたため黒砂糖を溶かしながら沸騰させる。沸騰したらすぐに火を消し、そのままさます。さましたらジョウゴで醤油の入っていたペットボトルに戻す。このタレはいつまでも日持ちするからあらかじめつくっておく。各分量は自分の好みでいい。しょっぱいのが好きなら黒砂糖を少なめにし、甘めがいいなら黒砂糖を多めにする。どちらにしろ飛び切りにうまくなるから毎回味を調整して進化させていけばいい。私はもう20回はらっきょうを漬けているが、いまだ研究過程にあり、死ぬまで進化し続ける。研究過程であっても毎回飛び切りうまい。

夕方、泥らっきょうの根を包丁で1粒づつ切り落とし、1粒づつ丁寧に水洗いする。タオルでらっきょうを拭いてやり、乾いたタオルに寝かせ、朝まで表面を乾かす。クーラーのそばに置いておくとさらりと乾く。

らっきょうたちへの愛が深まる。らっきょうはうまさを裏切らない。今年は1袋全部で117粒あり、117粒全部うまくなる。丁寧に扱って損はない。多少、雑に扱っても裏切られたことが1度もない。必ずうまい。うまさが長持ちしないから自分で漬けるしかない。外で食べられることはまずない。

70年ぐらい前の料理本が家にあり、数々の料理法が書いてあった。その中の泥らっきょうがうまそうで、その本の通りに漬けたら感動した。その本はもう捨ててしまったが、何回も漬けているので調理法が頭の中で進化しながら身についている。

朝、らっきょうの表面の皮が乾いてめくれてカサカサいっている。この状態になったらっきょうが汁を吸うのは早い。

完全に乾いているビンにらっきょうを詰め、上からタレを注ぐ。タレは少量でいい。20センチの高さの瓶なら、下3センチ程度溜まる程度でいい。ビンをぐるぐる回転させてタレをらっきょうにからませていく。気持ちが高まる。早くもうまそうだ。甘辛くていいにおいがする。

冷蔵庫に入れる必要はない。冷蔵庫に入れてはいけない。冷たいとうまくない。常温がおいしい。

浅漬けと同じだからビニール袋でもできるだろうが試したことはない。ビンを転がすのが楽しい。らっきょうがポトポト音を立ててタレにからまっていくのをうっとりとみつめる。

全体にタレがいきわたると数分でまんぱんだったビンの上部に隙間ができる。

らっきょうはぐんぐんタレを吸う。いつ味見してみても大丈夫だが、5時間過ぎた頃からうまくなってくる。根本と頭からタレを吸い、上から下からタレがらっきょうにしみ込み出したのがよくわかり、食べ頃がはじまる。もちろん、タレに漬かっている一番下がすぐに漬かるから、瓶は大きめの方がいい。上下にもらっきょうが転がるとまんべんなくタレがからまる。口の大きいビンなら手を入れ、おいしそうならっきょうを味見しやすい。

食べ頃を見極めるのが難しい。まだかな、というところから今だ、というところまで、ずっとおいしくてたまらず止まらない。

人それぞれうまさの見極めが違う。

味見段階で食べ終わってしまうことも多い。味見段階なのか食べ頃なのか何回漬けてもわからない。それほどうまい。最初は1キロ食べてしまう。おいしいのだからおいしいと思っているうちに食べたいだけ早く食べてしまえばいい。甘くてしょっぱくて、不自然でない気持ちのいい自然の辛さで歯ごたえがとてもいいから止まらない。ボリボリという豪快な歯ごたえが頭に響き、この爽快な歯ごたえはこのらっきょうでしか味わえない。らっきょうの甘みがタレと本当によく合う。

しょっぱさが冷えたビールに合う。ごはんにも合う。らっきょうをごはんの上にのせると醤油がいい具合にごはんにしみこむ。

あまりのうまさにビンを買い足してはいけない。1日で食べ切れる量を漬ける。1ビンづつ後悔ないように大切に付き合う。おいしく食べるにはそれしかない。1キロまでなら1人でもおいしいまますぐに食べ終わってしまう。

いくらおいしくてもいつかは飽きる。1ビン食べ終わってからもう1ビン漬ける。だいたい1シーズン2回でいい。

数日で発酵がはじまりすぐにすっぱくなりおいしくなくなる。汁を吸い過ぎてもしょっぱ過ぎておいしくない。腐ることはないのだが、完全に汁を吸うと真っ黒になり小さくなりまずい。あんなにおいしかったのに食べられたものではない。何度も手を入れて味見しているとかびる。時間が経てば経つほどしょっぱくてすっぱくて捨ててしまう。

らっきょうを何時間も放っておくことはできない。タレを入れたら頻繁にビンを転がす。早く食べたい。何時間もらっきょうにつきっきりなのですることのない日の朝に漬ける。友達に食べさせたくなるが時間との闘いなので人にあげるのは難しい。あげた人が食べる頃にはベストの状態ではないことがよくありがっかりする。においが強いから相手の都合もあり、いきなり食えとはいえない。らっきょうはタイミングがとても難しい。

手がかかるだけの価値は確実にある。(山田)

 

 

 

| chat-miaou | 01:01 |
熱いおにぎり

 

外食に飽きたら自炊の方がうまい。

なんといっても米がうまい。コンビニで買ってきた米でも本当にうまい。新米でなくても本当にうまい。日本人は米を食って生き抜いてきたから、体が米を欲していて、だから米が一番うまい。

炊飯器で炊けた瞬間のごはんをビニール袋に入れ、刻んだ長ネギと納豆とわさびと山椒で軽く握ったおにぎりにする。おにぎりにした方が歯ごたえが増し、味が凝縮して米はうまくなる。

熱いから手でもてない。タオルに包んでおにぎりに醤油を垂らしながら食べる。醤油より納豆のタレの方がうまい。納豆のタレは、タカノフーズおかめ納豆旨味についている昆布タレが甘くて一番うまい。私は旨味の昆布タレを溜め込み、小瓶に移すほど重宝している。

しょっぱいおにぎりの後の水がうまい。

自炊生活で面倒なのは買い物で、買い過ぎると悪くなったり古くなったりしてまずくなり、少な過ぎるとすぐになくなる。毎日買い物に行くのは疲れる。

自転車生活なので、雨が続くと家に食べ物がなくなる。

何もない時もおにぎりにかぎる。実は具がなくても米はかなりうまい。いや、たまには具がない方が米の旨味に集中でき、格別にうまい。

いつものように炊き立てのごはんをおにぎりにし、山椒と納豆のタレをたらしながら急いで食べると汗が出る。米も納豆のタレも山椒も、買い溜めしても腐るようなことにはならない。数か月は、いつでもうまい。

口の中から湯気を噴き出しながら熱いうちに急いで食い終えると喉がかわいている。山椒で唇と舌がしびれている。よく冷えた水を勢いよくゴクゴク飲むとさらに唇と舌がビリビリしびれ、にぎやかで楽しい。山椒はケチらず、安物でなく、高級品を買った方がよくしびれる。いろいろ試したが、高ければいいというわけではなく、今のところ緑の缶に入った飛騨山椒が一番よくしびれる。高級品は安物とはしびれがまったく違い、気持ちいいからおいしい。(山田)

 

 

 

| chat-miaou | 01:01 |
長ねぎの問題

 

朝起きると納豆が食べたくなる。

納豆+玉子の黄身+長ねぎ+わさび+タレで食べたい。湯気の立つ炊き立てのごはんに納豆をかけたら味噌汁もすすりたくなる。

歯を磨いて、シャワーを浴びて買い物に出掛ける。

まだスーパーは開店していない。24時間営業のスーパーは自転車で往復30分かかるから、そこまで面倒なことはしたくない。しょっちゅう早朝に買い物に出掛けている。

たまにコンビニに長ねぎが売っていると嬉しい。刻んであるものも売っているが、あれは風味が劣化してうまくない。刻み済みの長ねぎなら入れない。納豆に入れる長ねぎは縦に半分包丁を入れてから自分で刻まなければうまくない。

わさび以外は買い置きできない。量が多過ぎるし、冷蔵庫にあるとなぜか食べない。納豆を食いたいと思った朝、買い物に行くしかない。不思議と夜、納豆を食べたいと思う気にはならない。

牛丼屋の朝定食でもいいが、自分でつくった方がうまいし体にいい。体があたたまる。

味噌や出汁の素は一人暮らしには荷が重いからインスタント味噌汁を2食分鍋に入れ、なんでもいいから野菜と豆腐を煮る。赤だし気分なら永谷園のひるげ、合わせ味噌気分ならあさげ、納豆に入れた玉子の黄身の残りの白身も、ぐつぐつ沸騰した味噌汁の中に入れる。

白身を納豆に入れると、味が薄まるし、水っぽくなるからごはんの底に吸収されていってしまい、見栄えも悪い。食感がなく、さらさらとすぐに食べ終わってしまう。ごはんにかけた納豆の上に七味を振ると色合いが美しく、食欲が増す。

納豆に添付されているからしは入れても変わりがないから無駄な物は入れない。粉からしを練った物なら刺激が増してうまいが、練るのが面倒くさい。

中学生の時、学校帰りに長ねぎの入った袋を下げて歩く私をみて、近所の人に「お手伝い? 偉いわね」とよく声を掛けられ、嫌で仕方がなかった。母が料理をしない人だったので私は小学校1年からずっと自炊だった。今でも長ねぎをもっていると非常に目立つ。私生活をみられているようで恥ずかしい。たまにコンビニで半分に二つに切ってあるものが売られるようになったが、他でもああして欲しい。緑色の部分なんて家に帰って捨てるだけで、私はいつも自分でその場で半分に折ってレジ袋に突っ込む。おばさんが長ねぎを半分に折ってハンドバックに入れる漫画が昔はやったが、あんな姿、誰にもみられたくない。この世で一番重宝する食べ物といってもいいくらい好きなのに目立つからできるだけ買わない。

4時に起きることが多いのでなかなか長ねぎを入手できない。とはいえ、うまい納豆を食べるには長ねぎの代わりが絶対に必要だ。玉ねぎは長く保存できるが、代わりにはならない。玉ねぎはクセが強過ぎる。薬味とはいえず、うまく調和しない。かといって納豆だけでもうまくない。美しくない。キムチは主張が強過ぎ、食感が納豆と違うものとなり、ニンニクのにおいが残り、後味が悪い。

新玉ねぎなら合うが季節が限定されているし、季節になってもコンビニで見掛けることはない。

今のところ長ねぎの代わりができるのは枝豆しかいない。(山田)

 

| chat-miaou | 01:01 |
町の肉屋のメンチカツ

 

思春期の頃に通った町のメシ屋はどこもなくなってしまった。今考えても駅前にあった小さな中華料理屋はこの世で一番うまかった。1000食以上は食べたから、今でもそれぞれ味をよく覚えていて、あれに似た味はどこにもない。味噌の効いた肉野菜炒め、中華鍋でつくるから巨大化した三段のかつ丼、みためは動物のエサでトロみのない中華丼、トロトロで甘酢とは無縁のあの店でしか食べられない天津丼、酔っ払いが大喜びで注文する特盛チャーハン、小麦粉を強火で炒めてつくる具が肉と玉ねぎとセロリだけのカレーライス、どれも最強の名にふさわしかった。20年前になくなった店なのに、ネットで検索するといまだに熱い思いを語っている人が多いので、やはりあれは本当に地球で一番うまい中華料理屋だったかもしれない。

町の肉屋ももうすぐなくなる。魚屋も八百屋もなくなっていく。大型スーパーにかなわない。儲からないから後継ぎもいない。今のおじさんとおばさんが働けなくなったらどこも店を閉める。

町の肉屋にはうまいメンチカツがある。儲けを考えずに、昔から同じつくり方をしている。今風に合わせることなんてない。歳をとって今さらそんなことはできないし、する気もない。だからあいかわらずうまい。

レストランのうまい自家製メンチカツとは違う。デパートのうまい今風メンチカツとも違う。昔から慣れ親しんだ町の肉屋のメンチカツが一番うまい。

私の町の肉屋のメンチカツは肉がつまっている。10分前に頼めば揚げたてを買えるが、家に帰る間に冷えてしまう。

ここの肉のつまった固めのメンチカツにはとんかつソースよりもカレーよりもハヤシライスが合う。

外でカツカレーを食べていると、「もっと熱いのが食いたい」「揚げたてのカリカリしているのが食べたい」「ルーをケチちらずにドップリとかけたい」と思う。納得するには自分でつくるしかない。

町の肉屋に行ってメンチカツを二枚買った。100円ショップでカレー皿を買い、スーパーで油とレトルトハヤシライスを二つ買った。

手抜きをしない。レトルトハヤシライスはきちんと熱湯で十分過ぎるほどにあたためる。じっくりあたためると食べる時に湯気が勢いよく立ち上って気持ちがいい。

米が炊けるのに合わせてメンチカツをもう一度揚げなおす。衣がカリカリになって、さらにハヤシライスに合う。

米が炊けた。包丁でザクザクとメンチカツを三つに切り、ごはんにのせる。ハヤシソースをかけたいだけかける。ごはん、メンチ、ルー、どれも口がやけどするほどに熱くなっている。全てがそろった、こんなにうまいものはない。(山田)

 

 

| chat-miaou | 01:01 |
さば缶

 

さばの水煮ほどうまいものはない。

鍋を食う時、煮えてきたな、と思ったらさばの水煮缶を開ける。固形部分を食べる。スープは飲まない。毎回思うが、さばの水煮は脂がのっていて本当にうまい。醤油をかけてもうまいし、わさびにも合う。鮨屋で食うつまみと同レベルで、いつでもうまくて感心する。

固形部分を食べ終わったら缶を取り皿にして鍋を食う。

さばの水煮スープは、野菜でも豆腐でも、肉でも魚でも餃子でも何にでもよく合う。

鍋の味付けはあってもなくてもいい。さっぱりした薄味がいい。水炊きでいい。

さばの水煮の味付けは塩のみなのに、さばのうまみがスープに溶け出している。味が薄くなったら、ポン酢でも、おろし焼肉のタレでも、醤油でも、わさびでも、山椒でも、コショウでも、何を足しても生き返る。足したいものを足していき自分好みの味にする。どんなラーメン屋のスープよりもうまいスープへと変化していく。熱いスープが飲め、体にもいい。

自分の好みで味付けしていくのだからまずいはずはない。こんなにおいしくて熱いスープは外食では絶対味わえない。ごはんにも合う。

サバ缶は高級品でなくていい。高いには高いだけの意味があるようだが、たぶんさばを厳選しているだけで、普通の人には違いがない。年によって脂ののりが違うから高ければうまいというものでもない。脂ののりのいい年は、100円なのに例年よりもコクが増し、味が奥深い。コンビニで売っているサバ缶もめちゃくちゃうまい。

なぜうまいものは高いのだろう? という疑問は誰もがもったことがある。ウニ、牛肉、まぐろ、フォアグラ、数が少なくて生産、製造、保存に金がかかると高くなる。

ラーメン、ポテトチップス、米など安くてうまいものはたくさんある。

基本的に、エサを食う動物系が高く、水と太陽で育つ植物系が安い。

しかし、納豆や豆腐なんて、もしも大量生産できなかったら高級品にふさわしい味わいがある。

鯨と同じようにさばだっていつ何が起こって漁獲高が減るかわからない。さばは安いが、高級魚よりうまい。

さば缶を取り皿にした鍋がまずいと思ったら、悪いのは味付けに失敗した自分自身だ。(山田)

 

 

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神保町の昼メシ

 

長く神保町に勤めたので、長く続いている店はだいたいいった。

神保町に勤める編集者は神保町に会社があって本当によかったと日々実感している。本がたくさんあって、メシがうまくて、少し歩くと知り合いに出会って話がはずむ。すずらん通りの東京堂の前あたりで何度も空に向かって「俺は神保町に勤める正社員の編集者だ!」と叫びたくなった。毎日勤めながら遊んでいるのとかわらない。

神保町はうまいものだらけで、特に昼メシがうまい。神保町に勤めはじめた若者や神保町の学校に通いはじめた学生は、まずはてんぷらのいもやととんかつのいもやに感動する。とんかつのいもやのサービスの大根の漬物は甘くてかなりうまい。しょっぱくないからサラダ感覚で食べることができ、熱くてかために炊いたごはんの上にどっさりのせてボリボリ食べる。とんかつと対等にうまい。

神保町に点在しているいもやだが、白山通りからお茶の水方面にちょっと入ったてんぷらのいもや1丁目店の味噌汁がうまい。熱々で、わかめがたくさん入っている。揚げたてのてんぷら、熱々のごはんと味噌汁、夜は空いているからホワイトボードに書かれた本日の野菜天をどんどん追加すしていっても2000円しない。腹一杯にしてからまっすぐ家に帰った。神保町にいる人は誰でも平均30回はいもやにいったことがある。

それから誰でもカレー巡りをし、共栄堂、まんてん、キッチン南海、ボンディあたりは必ず一度はいく。どこも数百円で安くてうまい。

神保町デビューをした人は昼にうまいものばかり食べ、店が無数にあり、次から次に新しい、あらゆるジャンルの店が誕生するから飽きずにいき尽くすということがない。

不思議と、夜はいきたい店が少ないから、神保町の編集者は昼は神保町の会社の近所で、夜は他の街に電車に乗って打ち合わせに行く。

神保町から離れて長く経つと夜もやっぱりうまい。ランチョンのエスカルゴ、ビーフパイ、エビフライ、チキン唐揚げ、エビクリームコロッケ。

セルジュのミックスピザは濃厚で世界一うまいが生地づくりからはじめるから1時間かかる。

寿司政の甘くない鮨。

そばよりてんぷらの人気が高い松翁はバケツに入れた生きたエビを客席でみせてくれ、それから揚げたてをはしでつまんで急いでもってきてくれ口の中がやけどする。2人でいって、白子のてんぷらそば(3000円ぐらい)とえびのてんぷらそば(3000円ぐらい)を頼んで半分づつシェアするのが一番楽しい。てんぷらはシェアできるように切ってある。みな一度いくと誰かを連れていきたくなる。5時半にいけば誰もいないが、6時半には満員で入れず、たぶん今も予約は受け付けていない。よく仕事を抜けて1杯だけビールを飲んだ。

昼、うなぎの今荘が一番のご馳走だった。数か月に一度、うなぎの今荘にいきたくなり、いくと決めたら朝から体調を整え、満席になり列ができる前に、開店時間の11時半に今荘にいった。12時になると満席で入れず、すぐに食べられない。メニューはうな重のみで、大盛を頼む。ごはんの量が違うだけで値段は大盛と並でかわらなかった。並は炊き立てごはんの上に、チョボリチョボリとおいしいタレをかけ、焼きあがったうなぎをのせてふたをする。大盛りは箱から飛び出すほどにそびえた山盛りごはんにジャボリジャボリとおいしいタレがたっぷりふりかけられ、ごはんの頂上にふんわりと焼きあげられたホヨホヨのうなぎをのせ、おばさんが重箱の蓋で山盛りごはんをグッとプレスする。

配られた重箱を開けた瞬間、朝から何も口にしないで本当によかった。セットでついてくる肝吸いも熱々でいい感じだ。山椒を多目にふり掛け、肝吸いをすすりながらかために炊いたごはんに挑んでいくと上あごの皮がめくれた。何口食べてもうまさは続く。ごはんののど越しがたまらない。ずっとおいしいままに、ようやくごはんを食べ終え、最後にうなぎをいっぺんに頬張り口の中が脂っ濃くなり、目をつむって味わう。箱の隅の最後の一粒までおいくいただいた。ひたいにうっすら汗をかいて店を出る。

今荘の話をすると、聞いた人が翌日今荘で大盛を食う。何度も飲み屋で今荘について語り合い、翌日今荘で遭遇した。今荘のうまさは口コミで広がっていく。いかずにはいられなくなる。

3000円は全然高くない。他のうなぎ屋と満足感が違う。前の晩に語り合い、翌朝やはり決意する、朝から腹をすかせ、11時半に熱くておいしいうな重をかき込み腹一杯にする。これ以上の喜びはない。(山田)

 

 

| chat-miaou | 01:01 |
二日酔いうどん

 

何千回も二日酔いに苦しんで辿り着いた食事がある。二日酔いで料理をするのはかなり面倒だがつくる価値はある。

鍋にお湯を沸騰させる。

昆布だしで味付けし、何でもいいから野菜を入れる。昆布だしのみでは体に悪い。野菜からも旨みが出る。

日本酒をできるだけたくさん入れる。沸騰させるからアルコールが飛び、酔うことはないが迎え酒と同じ効果があり、血流がよくなっていくのがよくわかる。

部屋中に日本酒のいい香りが漂うが、ひどい二日酔いなのでいい香りが吐き気をもよおす。

日本酒で煮込むと野菜がネトネトに柔らかくなる。

鍋で沸騰させたままレンゲで汁を飲む。さっぱりしていておいしい。汗が出る。体の中の二日酔いの原因である毒素たちが溶けていく。

カップラーメンやインスタント袋うどんのうどんを入れる。付属のスープはつかわない。ラーメンでもいいが、うどんは昆布だしによく合う。煮込むのにも適している。二日酔いの体にはさっぱりした昆布だしと柔らかく煮込んだうどんがいい。ラーメンよりも体にいい。ラーメンには油が合う。二日酔いの体では油は消化できない。二日酔いにはうどんがいい。食べれば体がうどんを求めているのがわかる。

日本酒で煮込むとなんでもネトネトに柔らかくなり、うどんもネトネトに柔らかくなり消化にいい。インスタントうどんの香りがスープに溶け出し、体が本能的に炭水化物を求めているのがよくわかり、この辺からグンと食欲がわいてくる。うどんがスープの旨みを全て吸収し、うどんもスープも相互作用でどちらも旨味が増す。

さっぱりうどんを楽しんだら、今度はスープに醤油を垂らす。醤油はうまい、香りとコクが一気に増し、うどんもスープも3倍グレードアップする。

醤油に感謝し、今度は納豆のタレも垂らすと、さらに3倍うまくなる。

色々ためしたが、もうこれ以上はうまくならない。コショウや七味は好きな人にはいいかもしれないが、二日酔いの弱った体に刺激は毒となる。

スープが減り、もっと飲みたくなったら日本酒と昆布だしでかさ増しする。

日本酒、野菜、昆布だし、醤油、納豆のタレ、旨味しかない。夢中で食べ終わった頃には10だった絶望的二日酔いが43.5にまで治っている。体が温まっているうちに寝てしまい、起きて風呂に入れば健康体に戻っている。(山田)

 

 

| chat-miaou | 02:01 |
まぜそば

 

20年前、ツアー旅行でイタリアへ行った。

ツアースケジュールに組まれた食事はどれもうまくなかった。

現地は夜10時ごろまで明るかったが、暗くなると盛り場に出掛け、朝まで酒を飲んだ。知りもしないサッカーの話をイタリア人たちと適当に適当な英語で語り合った。英語のメニューも置いていないようなレストランがうまかった。チーズと食材のにおいがすごい。日本人は食べられない。メニューになんて書いてあるかわからないから適当に指さして頼んだらイカスミのパスタが出てきて、夏のゴミ捨て場の生ゴミのようなにおいで、一緒に行った日本人は一口しか食べられなかった。どんな味だったか今はもう思い出せないが、楽しかった。ああいうのはまた食べてみたくなる。

タイに行った時もたくさん外食した。プリックキーヌーという日本ではみない緑色の豆状の唐辛子があり、現地ではどの料理にも入っていて、唐辛子より辛くて日本人は食べられない。辛いより舌が痛くて噛めない。翌日肛門が風を感じるほどヒリヒリする。しかしうまい。

気温40度のタイでは日本と野菜が違う。タイのニラやキャベツにはあくがなく、甘くておいしい。生でモリモリいくらでも食べられる。野菜がナンプラーとプリックキーヌーとニンニクに合う。池袋のタイ料理屋「プリック」が比較的一番現地に近い味だがやはり野菜が違う。現地でしか食べられない味がある。プリックで、辛くて食べられない日本人もいる。かなり辛い。

タイで知り合いの家を訪ね、ご馳走になり、それが一番うまかった。今でも何度も思い返し、忘れられないほどうまかった。細麺にあふれるほどの生ニラや生キャベツなどの野菜をのせ、タイで袋入りで売っている豚の脂を揚げた物、揚げて味付けした小さなエビとニンニク、ナンプラー、味の素、すりゴマ、プリックキーヌーをまぜる。野菜が丼から落ちてしまわないように下の麺をほじくりだして野菜にかぶせるようにしてゆっくり慎重にまぜていく。よくまざって半分ぐらいの量にまとまってきたら食べる。旨みも半分に凝縮され、うまくてうまくて仕方ない。途中、もっと食べたくなってニラとキャベツを足して麺のうずに巻き込むようにする。味が薄くなってしまったから調味料を足す。追加が止まらない。味が濃いからごはんにも合う。野菜を食べ過ぎてもう食えない。

もう二度と食べることはできないが、あれをまた食べたい。食べた翌日にまた食べたくなるぐらいにうまかった。

アジア料理屋に行くと同じような「酔っ払い焼き」というのがあるがうまくない。

日本であれを真似すると、そうめんがいい。冬なら暖かいままでもいい。よく水切りしたそうめんに、サラダにつかえる生野菜をあふれるほどのせ、メンチカツを小さくきざんだ物とナンプラー、すったニンニクと一味唐辛子か七味唐辛子、味の素、オニザキのつきごま(白か金)でまぜていく。ニンニクは自分でする。自分ですったニンニクの汁が他の調味料とまざってタイ風の辛味になる、日本の野菜はタイと違うから、ナンプラーはにおいのない物にする。納豆のタレでもいい。醤油では代用できない。日本そばでもいい。うどんでもいい。ごはんでやるなら玄米がいい。白いごはんは味を全部吸い取ってしまい、べちゃべちゃになり食感が悪い。やわらかめにゆでたきしめんを熱いまますすればすぐにズドンと満腹になってうまい。

止まらなくなるから追加の野菜を多めに用意しておく。バカみたいに唐辛子をかけると汗が出てきて気持ちいい。

けっこううまいからタイから帰ってそればかり追求し、長沢にも食わせると、新しい味に喜んだ。刺激が強くてうまいからやみつきになる。

後日長沢に会うと、

「あれ以来、あれが食いたくてたまらないから、悪いんだけど、またつくってくれるかな?」

と恥ずかしそうに言った。(山田)

 

 

| chat-miaou | 01:01 |
まず、メシを食う 2

 

酒を飲みたくなったら痛風の痛みを思い出す。一度飲んだら絶対また飲みたくなる。脳と体が酒を求め続ける。

一度二日酔いになるほど飲んでしまったら翌日迎え酒をし、また二日酔いになり連続飲酒がはじまる。痛風発作が出るまでアル中生活から抜け出せない。

日が暮れて居酒屋の近くを通ると入りたくなるから日が暮れる頃にまずはメシを食ってしまう。アル中にとって食後の酒ほどまずい物はない。

アル中は甘い物を食べない。体が受け付けない。ケーキが恐い。生クリームが恐い。

焼肉と大盛ライスの後のコーラはうまいが、酒を飲んだ後にみんなで焼肉屋に行き、コーラを頼むが飲めない。自分でも笑ってしまうほどコーラが飲めない。「どうして頼んだのに飲まないの?」と聞かれても飲めない。焼肉にコーラはうまいと思っているから頼んだのに、酒を飲んだ後は体が完全に拒否して、一口も飲めない。コップに触れるのも嫌だ。

酒と甘い物は両極端で、二週間酒を飲まず、体から完全に酒が抜けると今度は甘い物が食べたくなる。酒の代わりに甘い物、アル中はみんな共通してそうなる。

禁酒に成功したアル中は甘い物を食べる幸せを語り、健康になり酒を飲んでいた自分を否定するようになるが、そのうちまた生きているのが嫌になり、酒に手を出し、甘い物など見向きもしない。甘い物では苦悩をやわらげることはできない、苦しみの時間を早送りすることはできない。

酒なしで乗り越えていきたい。酒なしで乗り切る習慣を身につけたい。時間が経って過ぎ去ってしまえばなんていうこともない。酔っ払って時間を早送りして生きてきたが、もう痛風の痛みに耐えられない。あの地獄の痛みを思い出し、飲まずに済ませる。

これまで酒でつぶしてきた膨大な暇な時間を前に、深く考えないようにして、日が暮れる前にはちみつをかけた食パンを1枚食べるだけで全然違う。甘い物を食べた後の酒は特別にまずい。アル中が甘い物を食べるのは覚悟と勇気がいるが、食べてしまえばなんていうこともない。食べ終わると、酒を飲みたくない自分がいる。

パン屋のパンがどこもうまい。10年前にくらべると、レベルが格段に上がり、どこのパン屋も10年前だったら都内で人気になるレベルに達している。家賃の高い都内を離れ、地元に帰ってくる職人が多くなり、都内に出なくてもうまい物がたくさん食べられるようになった。少子高齢化により、土地を相続してビルを建て、家賃なしで利益をあまり考えず、のびのびとおいしい物を追求していく人が増えた。

おいしいパン屋をみつけてパンに野菜をはさんで食べるとうまいが、たくさんはさめない。パンに野菜をのせて食べれば一度に食べられる野菜の量は増える。

どこのパン屋も食パンやフランスパンだけで十分うまい。よく水切りしたレタスに小さく切ったフランスパンを包んで食べるとうまい。

野菜サラダは新鮮さと水切りが勝負だ。腕を振って完璧に水切りすればするほど野菜はうまい。野菜がまずい店には行かない。自分で納得いくまで水切りした野菜の方が100倍うまい。

よく水切りしたサラダに小さく切った焼き立てのパンをまぜ、ドレッシングをかけながら箸か手づかみでバリバリ食べる。カリカリしたパンとザクザクした野菜の食感に夢中になり、一皿食べ終わると酒を飲みたい気分は消えていた。(山田)

 

| chat-miaou | 01:01 |
まず、メシを食う 1

 

外食に飽きると自炊する。

自炊すると本当にメシがうまい。何しろ自分の思い通りに味付けできるのだからうまいに決まっている。日々、道具や調味料が増えてくる。

私は遊び人の親の子なので、小学校1年の時から自分でメシをつくり、自分で弁当をつくったので、一通り料理はできる。魚もさばける。母は料理ができなかった。

いきついたのはヒガシマルのうどんスープで、味付けは一生これだけでもかまわない。もう10年以上、毎日のように食べている。ヒガシマルのうどんスープで野菜を煮込んでごはんかパンで食べる。汗をかいて体が温まり、体にいい。二日酔いに効果がある。あらびきコショウや山椒や醤油を入れればいつまでも飽きない。コショウも山椒も醤油も最近どんどん進化して、スーパーやデパートに新製品が並ぶ。

外で食うよりうまい。

ほかの出汁の素やスープもたくさん試したが、やはりヒガシマルのうどんスープが一番で、もう他を試すのは無駄になってきている。あんなにおいしいスープがどこのスーパーでも売っているのもいい。

デパートの食品売り場でダイトラの濃縮おでん汁というのをみつけた。スーパーもデパートも最近はバイヤーの腕が上がり、次から次にうまくて新しい商品が並ぶ。本気でうまいものを探さないと生き残れない経済状況になっている。売り場を散歩していると自分と相性のいい商品たちが目に飛び込んでくる。

ダイトラのおでん汁はすぐれていて18倍濃縮で、野菜を煮込むとうまい。野菜を食べ終わったスープをごはんにかけてもうまい。まだ出会ったばかりだが、もしかしたらヒガシマルよりもうまいかもしれない。

足が腫れ始めた。酒を飲んだら痛風の発作が出る。空腹になると酒が飲みたくなるから朝起きたらまず、メシを炊く。米や野菜をたくさん買い込んだ。皿と茶碗も買った。酒を飲んではいけない。歯をみがいて、体操をして、風呂に入って、すっきりしてからメシを食う。(山田)

 

 

 

| chat-miaou | 01:01 |